昨年には結成25年を迎え、初のドキュメンタリー映画『DENKI GROOVE THE MOVIE? -石野卓球とピエール瀧-』も公開されたばかりの電気グルーヴ。今や俳優としても映画やテレビに引っ張りだこのピエール瀧と、ヨーロッパを中心に海外でもDJとして成功を収めている石野卓球のバンドだ。

彼らが全国区の人気になったのは、ニッポン放送の深夜ラジオ番組『オールナイトニッポン』の功績が大きかったのではないだろうか?

1991年6月に土曜日の2部(深夜3時~5時)としてスタートしたが、2部最高の聴取率5%を記録するなど異例の人気を集めて、翌92年10月には火曜日の1部(深夜1時~3時)に昇格。ラジオの概念を超えたやりたい放題ぶりで熱狂的なファンを獲得しながら、1994年3月まで暴走を続けた伝説のラジオ番組だ。
ヘビーリスナーだった筆者の記憶に鮮烈に刻まれた、その暴走の一部を紹介しよう。

ピエール瀧が演歌歌手としてデビュー


ピエール瀧が扮する演歌歌手、「瀧 勝(たきまさる)」がでっち上げレーベル『ドリルキング』からリリースするシングル『人生』を盛り上げる企画。「瀧 勝」は、ホコ天でマメカラで歌っているところをスカウトされてデビューされた逸材。ピエール瀧によく似ているが、あくまで別人。……という設定である。


1991年8月23日にデビューし、原点である原宿のホコ天や大阪の通天閣でプロモーションを行うが、8月31日には「師匠の犬先生に噛まれて死亡」となった。
ちなみに、オリコン総合チャートで131位、演歌チャートは38位という微妙な結果に終わっている。

モヒカン刈りをかけてゲーム対決


ドラクエにハマりすぎて専門学校を辞めた経歴を持つほどのゲーマー、瀧。番組内でスーパーファミコンの人気ゲーム『スーパーファイヤープロレスリング』を題材に『ストップ・ザ・瀧』のコーナーを設け、リスナーとゲーム対決!
自らのモヒカン刈りを掛けてトーナメントを開催するが、あえなく破れてしまい、本当にモヒカン刈り姿に……。ちなみに、瀧が現在のような短髪になったのはこれがきっかけである。

ニセ長島監督で空港大パニック事件


1992年秋に行われた『全国鼻毛あばれ牛ツアー』で札幌を訪れる際に、「千歳空港に長嶋茂雄そっくりの姿で降り立つので、監督がさも来るかのように出迎えろ!」とリスナーに告知したところ、本当に大勢のリスナーが詰めかけて盛大に出迎えた。
すると、一般客も本物がいると勘違いし始め、空港はパニックに。大混乱の中、電気グルーヴも荷物を失くすなど散々な目に。


ウソだらけのリクエスト大会


1992年10月17日放送の第2部最終回、「火曜1部昇格記念・思い出リクエストアワー」と題し、大々的にリスナーからハガキを集めるも、放送内容はそれらを完全無視。
100人の森進一そっくりさんによる『おふくろさん』大合唱や、瀧と卓球がケンカをでっち上げたりと、架空のコーナーのオンパレード。2時間すべてウソの放送を繰り広げた。

「2部の最後だからリスナーはニッポン放送前に集合!」とあおるも、ニッポン放送の玄関には「本日の電気グルーヴのオールナイトニッポンは録音です」という張り紙が無情にも貼られていたのだった。
おかげで、同年12月29日に本当のリクエスト大会が開催されるが、リスナーがまたドッキリじゃないか、と警戒したせいでハガキの集まりが極端に少なくなってしまうのであった。

弾けない楽器でライブを開催! しかも東京ドーム!


1993年5月、でっち上げレーベル『ドリルキング』から瀧勝に続く新たなアーティストとして「子門’z(シモンズ)」がデビュー。メンバーはチヨノフG、ナガシマシGEO、ライ-DEENという電気グルーヴによく似た3人(この頃はまりんこと砂原良徳を加えた3人体制)。

『泳げたいやきくん』で一世風靡した子門真人によく似た風貌で、RCサクセションの名曲『トランジスタラジオ』のカバーがデビュー曲だ。

ニッポン放送の企画として8月9日には東京ドームでライブも開催。ギター、ティンパニー、トロンボーンという各人が弾けない楽器で、寺尾聰やゴダイゴのカバーを演奏するめちゃくちゃなライブを披露している。
今後の方向性が不暗視される中、8月31日には「食べ過ぎにより全員死亡」となってしまった。


昨年の12月26日に行われた『DENKI GROOVE THE MOVIE?』の初日舞台あいさつに、2人揃って登場した電気グルーヴ。卓球は片手にワインの酔っ払い状態で登場し、上機嫌で『ふぞろいの林檎たちパート2』の柳沢慎吾のものまねや下ネタ話を連発。

「電気グルーヴのファンはブスやモテなさそうな男性の方がめちゃめちゃ多い」とファンをディスったかと思ったら、「生涯で最初で最後。あすエボラ出血熱で死ぬんで」と、最後は得意の死亡ネタを投下。20分間、ほぼ映画と関係ない話で終えたんだからさすがである。

テレビでは許されないこのノリ。やはりラジオでこの2人の掛け合いが聞きたいものである。
(バーグマン田形)