「エッチなしたぎ」「あぶないみずぎ」…妄想を重ねたドラクエ装備
『ドラクエ装備』画像はAmazonより

90年代までのドラゴンクエストシリーズといえば、いずれも名作であることに違いはないが、キャラクターのアートワークが一切変化しなかったこともあって、いまいちキャラクターの状態(主に見た目のことだが)が把握しづらかった。

強力な防具や武器に心躍らせても、装備したときの見た目に反映されず、ステータスの数値でしか強さを把握できないことにむずがゆさを感じたプレイヤーも多かったはずだ。


「あぶないみずぎ」「エッチなしたぎ」が掻き立てた妄想


パーティを組んで冒険できるようになったドラゴンクエストIIから、自分自身以外の仲間の装備にも気を使う必要がでてきた。もちろん硬派にボスを倒して世界の平和を取り戻すことに心血を注ぎ、クリアして満足するということもできたが、ドラゴンクエストというのは何周だってプレイしたくなるRPGだ。たった1周で満足できるゲームではない。1周目ではできなかったことを2週目以降の周回プレイで実現させるというのも、楽しみ方のひとつだった。

特に装備品に関していえば、物語の進行上必要がなくても、装備させたいものが存在した。そう、「あぶないみずぎ」や「エッチなしたぎ」といったけしからんものたちだ。当時、見た目上の変化がなくとも手に入れたいものだった。
装備名の字面だけで、あの頃少年だった僕たちは妄想を膨らますことができたのだ。

MSX版ドラゴンクエストIIで初めて目にできた「あぶないみずぎ」


ファミコン版、スーパーファミコン版のドラゴンクエストシリーズでは何度も「あぶないみずぎ」や「エッチなしたぎ」が登場したが、1度たりともキャラクターの見た目に変化が現れることはなかった。しかし、MSX版に移植されたドラゴンクエストIIにだけ実装された演出があった。それが「あぶないみずぎ」装備時の演出だ。

パーティの仲間の一人、ムーンブルク王女が「あぶないみずぎ」を装備したとき、そのちょっとエッチな装備姿が画面いっぱいに表示されるのである。イラスト自体の完成度は残念な感じこそ否めないが、ドラゴンクエストシリーズ長きといえど、この演出がほどこされたのは前にも後にもMSX版ドラゴンクエストIIだけ。


「あぶないみずぎ」、「エッチなしたぎ」のほかにも「おどりこのふく」、「バニースーツ」、「ピンクのレオタード」、「まほうのビキニ」といった少年たちの妄想を最大限掻き立てる装備の数々が登場してきた。これらは、ドラゴンクエスト公式ガイドブックのイラストを見ることで、脳内で補完されよりゲームの世界観に潜り込んでプレイできていたようにも思える。

ドラゴンクエストVIIIなど、2000年代に入ってから登場したドラゴンクエストシリーズでは、キャラクターが装備を変更すると、それに応じてキャラクターの見た目が変化するようになった。彼女たちのちょっとエッチな姿をプレイしながらにして見ることができるようになったのは、大人になった僕たちにとって喜ばしく感じる反面、どんな装備なんだろうとあれこれ妄想できなくなったことに一抹の寂しさを覚えるところに成長を感じる今日このごろである。

(空閑叉京/HEW)