1998年に公開され、当時も大きな反響があった『プライベート・ライアン』。舞台は第二次世界大戦時に展開されたノルマンディー上陸作戦で、北西ヨーロッパ侵攻を敢行した連合軍の大規模な同作戦を壮大なスケールで再現している。

監督はスティーブン・スピルバーグであり、実際に大戦で戦線に参加した父に捧げた作品。

第二次世界大戦という史実に基づいた作品では、戦争であっただろう過酷さ、苛烈さなどの再現が求められる。この『プライベート・ライアン』は残酷な描写を許容しながら、多くの犠牲者を出したノルマンディー上陸作戦を描いたのだ。

『プライベート・ライアン』の映画史に残る約20分間


『プライベート・ライアン』は連合軍によるノルマンディー上陸作戦の第一陣が、激しい銃撃戦を繰り広げながら浜辺から高台を目指すシーンからスタートする。この冒頭のシーンは約20分間にも及んだ。

「ただ事実を見せる」という冒頭の約20分は、観客に覚悟を求める。もしかすると、この冒頭の「惨劇」に堪えられず、鑑賞を止めた人もいるはず。
しかしこれらの描写は、見るに堪えない光景こそが戦争だということをしっかりと表しているのだ。

中盤以降は人間関係を描く『プライベート・ライアン』


中盤以降は、一人の落下傘兵を救出して無事帰還させるという小部隊による作戦を行う。
この作戦の行程では、兵士たちの衝突や葛藤、強い絆が丁寧に描写されている。部隊を率いたジョン・H・ミラー大尉(トム・ハンクス)の優れた統率力で隊を進めるが、戦闘によって兵士が命を落とすことも。
たった一人の兵士のために決死の任務をする兵士同士の衝突がありながらも、それでも部隊は前進を続けたのだ。

そしてラストの戦闘シーンは、冒頭と並ぶ『プライベート・ライアン』の名場面である。
冒頭は俯瞰的な視点を中心としているが、ラストは一兵士、一人の人間の視点で戦場を捉えているのが大きな特徴だ。

アカデミー賞11部門にノミネートされた『プライベート・ライアン』は上演時間170分にも及ぶ大作だ。長さ的にもテーマ的にも鑑賞には体力と忍耐が必要。そのため、まだ見ていない人は体調の良いときの鑑賞をおすすめである。

プライベート・ライアン