Jリーグ発足に沸き立った1993年。180試合で延べ323万人の観客を動員し、Jリーグ関連商品の市場規模は年間1,300億円にまで拡大するなど、世の中はJリーグブームに浮かれまくった。

そんな中、安易なサッカードラマが粗製濫造されていたのを覚えているだろうか?

バレーに負けた!?『もうひとつのJリーグ』


『もうひとつのJリーグ』は、1993年10月22日に日本テレビ系にて毎週金曜夜8時~スタート。架空のチーム「東京セインツ」の選手たちの青春を描いたドラマだ。
サッカーが上手いタレントをオーディションで選抜しリアル感を追求したのが特徴であり、読売グループの強みを生かし、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)の全面協力により制作。永井秀樹(現在もヴェルディに所属)を始めとする当時の若手選手も出演していた。

爆弾を抱えた天才FW役に中上雅巳というのが、実に時代を感じるキャスティング。元いいとも青年隊であり、後に山瀬まみと結婚するタレントである。
高橋由美子、持田真樹と当時の人気アイドルも出演。

高橋由美子が『南くんの恋人』でブレイクするのは翌年だが、 “20世紀最後の正統派アイドル”と呼ばれ、アイドル人気はすでに最高潮だった頃に当たる。
持田真樹は前年、野島伸司脚本の衝撃作『高校教師』で、教師役の京本政樹に襲われる体当たり演技で注目を集めていた。

しかし、肝心のドラマが昭和の青春ドラマ然とした時代遅れな内容で視聴率は振るわず、全11話の予定だったが5話で打ち切りとなっている。しかも、4話放送後には2週に渡ってバレー中継を放送。視聴者の関心も薄まりまくった再開後の5話でひっそりと打ち切りという酷い仕打ちだった。
間接的に止めを刺したのがバレーだったというのが、なんとも皮肉である……。


大鶴義丹の運命を変えたドラマ『オレたちのオーレ!』


『オレたちのオーレ!』は、1993年10月14日にTBS系にて毎週木曜夜8時~スタート。ノリで付けたとしか思えないドラマ名からして脱力必至。
Jリーグの持つ「地域おこし」の側面にもクローズアップしたのが特徴で、主人公がサッカーの本場ブラジルのプロサッカー選手であるように、ブラジルもドラマの鍵となっていた。

主人公を演じたのは大鶴義丹で、彼を思う日系ブラジル人はマルシア。そう、二人の出会いはこのドラマなのである。
ちなみに、主人公の性格設定は「陽気だが、異性関係にだらしなく、いい加減な性格」。後に浮気相手を自宅に連れ込んで、帰宅したマルシアと鉢合わせしてしまった大鶴義丹そのままの気がしてならない。


半年間の放送を予定するほどの力の入れようだったが、こちらも視聴率は低迷。結局、全11話で打ち切りとなった。

記憶の片隅にすら残らない『青春オフサイド!女教師と熱血イレブン』


『青春オフサイド!女教師と熱血イレブン』は、1993年10月19日にテレビ朝日系にて毎週火曜夜8時~スタート。どうしようもないくらいに死臭漂うドラマタイトルである。
女教師役はかたせ梨乃で、熱血イレブンのエースは『ぼくらの七日間戦争』が代表作の菊池健一郎。弱小チームの成長ストーリーぐらいしか記憶にないが、このドラマは今回紹介した3作品で唯一打ち切りを食らっていないのだ!
といっても、元々全4話で設定されていただけであり、低視聴率だったのは言うまでもない……。


「一億総サポーター時代」に狂い咲いた3作品。DVD化はもちろんなく、検証される機会もまずないので、このまま歴史の闇に葬られてしまうのは確実だ。
所詮、「カレーを食べたまさお君がみるみるラモスに変身する」JリーグカレーのCMにすら勝てないインパクトだったのだから、それもやむなしといったところか……。
(バーグマン田形)

KAZU(カズ)―ザ・スーパーストライカー