2016年4月。フジテレビの月9枠で、人気子役の芦田愛菜と、連続テレビ小説『マッサン』でヒロインを演じたシャーロット・ケイト・フォックスがW主演を務める連続ドラマ『OUR HOUSE』がスタートします。
このドラマで脚本を執筆するのは、野島伸司。民放・ゴールデンタイムの枠で筆を取るのは、2012年日本テレビ放送の『理想の息子』以来、実に4年ぶり。
思い返すと、90年代前半。彼はドラマ界において時代の寵児でした。『101回目のプロポーズ』『愛という名のもとに』『ひとつ屋根の下』『高校教師』『人間・失格』……。彼が描いた作品はことごとく大ヒットとなり、『ひとつ屋根の下』に至っては、第11話で、フジテレビドラマ史上、いまだ破られていない「37.8%」という空前の視聴率を記録しました。

そんな野島作品の魅力を語る上で欠かせない要素の一つが、抜群のセンスで選ばれた楽曲です。主に大手事務所などに見られる「俳優と歌手の抱き合わせ商法」が蔓延する中で、彼のやり方はかなり異端。主に懐メロを駆使して、その作品の付加価値を向上させているのです。
しかも、ドラマとの相乗効果で、その曲自体も再評価され、リバイバルブームを起こすという離れ業も何度かやってのけています。ここでは、そんな懐メロ使いの名手・野島伸司が作中で扱った名曲を、いくつか振り返っていきたいと思います。

チューリップ「サボテンの花」…『ひとつ屋根の下』


『ひとつ屋根の下』が放送開始したのは、1993年。トレンディドラマブームが終わり、次のキムタク主演作品をはじめとする「月9ブーム」が始まろうとしていた時代です。
その先鞭を、『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』と共につけたのが、この作品でした。

トレンディドラマだと「都会的若者カルチャーを描く=現代風の楽曲を使う」という思考でテーマソングが選定されていたため、電子音やリズム体が強めのポップスが多かったのですが、野島が選んだのは、フォークソング。チューリップの「サボテンの花」でした。財津和夫の優しい歌声が、家族の絆や人の情を描いた本作の世界観と驚くほどマッチし、情緒豊かに物語を盛り上げました。結果、ドラマは前述のように大ヒット。リバイバルでリリースされた『サボテンの花』も60万枚という売り上げを記録しています。

森田童子「僕たちの失敗」…『高校教師』


高校時代、同級生からライブハウスに誘われた野島。そこでギター片手に歌う、カーリーヘアーにサングラスといういでたちの女性を目撃します。それが、森田童子でした。その独特な楽曲に、強烈なインパクトを受けた彼は、10数年後、『高校教師』のテーマ曲に「僕たちの失敗」をはじめとする彼女の作品を選んだのです。
森田のナイーブな歌詞とつぶやくような歌い方は、切なく破滅的な恋愛に溺れる教師と生徒の物語にベストマッチ。ちなみに、上戸彩主演のリバイバル版が放送されたときも、同様に森田童子の曲が使われていました。それだけ、彼女の歌声が『高校教師』と、切っても切れない関係ということでしょう。


フレディ・マーキュリー(QUEEN)「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」…『プライド』


邦楽に対して造詣が深い野島ですが、洋楽に関しても相当な思い入れをもっているようで、度々、過去の名曲を自分が脚本を務めるドラマの主題歌に選定しています。例えば、田村正和主演の『美しい人』ではジェーン・バーキンの1978年のアルバム収録の佳曲「無造作紳士」、竹野内豊と山崎努主演の『世紀末の詩』ではジョンレノンの「LOVE」、『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』ではABBAの「チキチータ」など…。枚挙に暇がありません。
このキムタク主演の『プライド』では、QUEENの楽曲を随所に使用。事実上のドラマ使用曲集『ジュエルズ』が発売され、オリコン3週連続1位を獲得し、その後ミリオン・ヒットを記録しました。

このように、ドラマ界・音楽業界において数々の功績を残してきた野島伸司。4月放送開始の『OUR HOUSE』含め、今後、どんな音楽とストーリーのドラマで、私たちを楽しませてくれるのでしょうか。期待したいところです。

(こじへい)
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