コメントから伝わる小猫師匠の一所懸命さ
『ゲーム王国』放送当時の小猫師匠は45歳。どんどん新しいゲームソフトやゲーム機が登場していった時代にあって、決してゲームに詳しいわけでもなかったはずだが、それでも子どもたちに情報を届けようとする姿勢に筆者も当時子どもながら非常に好感を持っていた。
番組の収録スタジオに遊びに来ている子どもたちと観覧席に一緒に座って「皆で一緒に遊ぶと面白そうだよね」とゲームの感想を語り合ったり、ゲーム実演紹介では自らコントローラーを握って「必殺技の出し方は〜」と、子どもたちが極力理解しやすいように実況していた姿が印象的だった。また、実況通りに必殺技を繰り出す様子は必死に練習したのだろうという努力が伝わるものだった。
子ども同士の対決バトル、親のように喜ぶ姿
同番組ではメイン企画のひとつに、子ども同士のゲーム対決コーナーがあった。緊張で顔がこわばる子どもに対して緊張をほぐす仕草や、負けて悔しそうな顔を見せる子どもに対してフォローする様子、勝利を一緒に喜ぶ姿は、さながら優しい父親のように見えたものだ。
ただ、そんな小猫師匠でもカバーできない場面もあった。それは同じくゲーム対決コーナーで勝敗が決したあとの一場面だ。同コーナーでは勝利した子どもにも、負けてしまった子どもにもプレゼントが用意されていた。そのプレゼントだが、誰が見ても負けた子どもがもらえるプレゼントのほうが嬉しい内容だったのだ。
勝者向けとして提供されていたのは、番組放送初期は「プレイディア」という幼稚園、小学校低学年といった低年齢層向けのゲーム機だった。ソフトは33本発売されたが、鳴かず飛ばずで発売からすぐに市場から姿を消した幻のゲーム機のひとつだ。放送後期には望遠鏡がプレゼントとして用意されていた。
一方で敗者向けプレゼントは、対戦に利用したゲームソフトがそのままもらえるという、ゲームが大好きでスタジオに遊びに来た子どもからすれば負けたほうが得する内容になっていたのだ。
勝って喜んでいたのに、勝者向けプレゼントをもらって急に真顔になってしまう子ども、そして敗者向けプレゼントをもらってにっこり笑う子ども…。この光景にはいくら小猫師匠といえど、フォローはなかなか難しかったようだ。
小猫師匠は前身番組の『Theゲームパワー』から後継番組の『ゲームEX』を途中降板するまでの10年間に渡って司会を務めた。その10年間の懸命さは、大人になった今でも思い出しては尊敬できる姿だった。
(空閑叉京/HEW)