“超兄貴”、それは突如ゲーム界に登場した異質のシューティングゲーム
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シューティングゲームの一般的なイメージは? と尋ねられると、ゲーム好きに限らずほとんどの人が「戦闘機などに乗って空を飛び、敵機を打ち倒していくゲーム」と回答するだろう。この回答は模範的でほぼ100点満点の回答だ。
しかし、90年代初頭にそんな一般的なイメージを大きく覆したゲームが存在した。その名は『超兄貴』。名前からして手に取りづらいゲームタイトルである。

クリスマスの日にマッチョな世界観でやってきた


『超兄貴』はPCエンジン向けにメサイヤから1992年に発売されたシューティングゲームだ。ただ、その世界観はおよそこれまでのシューティングゲームとは明らかに異質なものだった。筋肉美こそすべてといわんばかりの世界観?を全面に押し出したゲームだったのだ。

しかもこの『超兄貴』、発売日が12月25日のクリスマスだった。
よりによってなんでこの日なのかと思ったものだ。

一度目にしたら忘れられないインパクト


『超兄貴』での自機は、戦闘機ではなくマッチョな男性。これだけでかなり強烈な先制パンチを浴びせられた気になる。主人公は天界の神でイケメンマッチョのイダテン(韋駄天)という。

彼こそがゲームタイトルにもあるように兄貴的存在なのだが、イダテンの舎弟にすぎないアドンとサムソンという兄弟のインパクトが強すぎることも話題となった。アドンとサムソンを主人公を勘違いしている人も少なくない。ガチムチな見た目と、有名ゲイ雑誌名から名付けられたのではないかと想像しやすい名前は、当時のシューティングゲーム界にもプレイヤーにも強烈な印象を与えるには十分すぎるほどだった。


加えて、説明書で深い意味はないとしながら記載された“ドピュッと発射する一撃必殺の溜め撃ち「メンズビーム」”という一文は、性に関連する描写に敏感すぎるお年頃な男子中高生にとってかなりインパクトある攻撃表現であった。


“真面目にふざける”を体現したゲーム


設定のせいかおふざけ感しか感じられない『超兄貴』だが、世界観が異質なだけでゲームとしての評価は非常に高い。特に、それまでシューティングゲームにおいて雑な設定なことが多かった「オプション」(自機追従型兵器、分身)に、『超兄貴』においてはパワーアップや耐久力という概念があったのが新しかった。まあ、アドンとサムソンという名前がついていることからして普通ではなかったのだが。

たとえばパワーアップアイテム(プロテイン)を主人公イダテンではなくオプションが獲得すると、5段階までパワーアップできたり、敵の攻撃に被弾して耐えられなくなると「あにきぃ…」と叫びながら戦線離脱したり。完全にふざけてはいるが、ゲームとしては至って真面目でなんら間違っていない。
その証拠に、同作は5度の再販を重ねるほどのヒット作となった。

『超兄貴』はシリーズ化され、オプションだったアドンとサムソンが主人公となって兄貴イダテンを助けに行くシューティングゲームがリリースされたり、スーパーファミコンではまさかの格闘ゲームとして成功を収めた。さらにはセガサターン版とプレイステーション版で実写版まで作ってしまうなど、狂気すら感じさせつつも、それでいてシリーズすべてが笑いながら楽しくプレイできる愛すべきゲームだった。

(空閑叉京/HEW)