見た目はミニサイズの極太ペン、キャップを開けてみると中に入っているのはキャンディ。90年代に流行した、いかにもアメリカンなギミック満点の菓子が、キャップを外してフタ底を押してペロッと舐めるタイプのキャンディ『プッシュポップ』だ。


“舐めたいときに舐められる”という特徴


90年代に流行したキャンディ「プッシュポップ」 時代に合わせて(?)進化していた
画像は現在のスライダーズプッシュポップ公式サイト動画より

日本のキャンディは良くも悪くも一口舐めきりサイズのものがほとんど。もちろん、ペロペロキャンディのようなスティックタイプのキャンディもあるが、いずれにしても袋を開封すると、基本的に一度で食べきるしかないという仕様だった。しかしアメリカからやってきた『プッシュポップ』はそんなキャンディ界における「中断できない」というちょっとした悩みを解消したお菓子だった。

『プッシュポップ』の“舐めたいときに舐められる”という、キャンディ好きにとって永遠の課題を解消したかのような魅惑的な仕様は、キッズを虜にした。加えて『プッシュポップ』がペンタイプであったこともあり、腰のベルトにはさむことで携帯して持ち歩けるお菓子としても抜群の存在感を放っていた。

発想は良かったが現実は厳しかった


好きなタイミングでいつでもキャンディの続きを楽しめる、その発想は素晴らしいものだったが、現実は厳しかった。ギミックこそ派手で楽しかったものの、「キャンディを舐めたあとにキャップを閉めると、再度キャップを開けようとしたときにベタベタして開けづらい」という致命的な弱点があったのだ。

さらに問題だったのは、気温によってキャンディが溶けてしまい、キャップを開けるタイミングで手もベトベトになってしまうという現実。子どもはそんなことお構いなしにキャンディを楽しめるのだが、親はそう簡単にそんな状況を良しとするわけにはいかなかった。子どもの手が糖分でベトベトになる菓子。そんなわけで、親子間における「『プッシュポップ』購入するしない戦争」が主にスーパーで密かに繰り広げられていたことを筆者はよく覚えている。

よりスタイリッシュな姿で見事に復活


『プッシュポップ』はものすごい勢いで流行し、そして風のように去っていった。しかし多くのキッズたちがその存在を忘れかけた頃、『プッシュポップ』は『スライダーズプッシュポップ』なる新形態となって帰ってきた。欠点だった一度口にした後に再び口にするために押すときのベトベト感も、スライド式にすることで大幅に解消されている。
見た目もずいぶんかっこいいものとなった。

最近ではキッズ大好きHIKAKINがHikakinTVでネタにしたこともあってか、キッズたちによる『プッシュポップ』改め『スライダーズプッシュポップ』人気も再燃の兆しが見えている。しかし、やっぱり暑い場所だと溶けるだろうから、子を持つ親世代となった当時のキッズ各位には、そのあたり念頭において与えてあげて欲しいものだなあ。

(空閑叉京/HEW)
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