長いキャリアの中で、様々なドラマに出演している松嶋菜々子ですが、彼女の代表作というと、一体、何になるのでしょうか? やはり、人気を不動のものにした『やまとなでしこ』の「桜子さん」でしょうか。もしくは近年、社会現象にもなった『家政婦のミタ』の「三田」、あるいは、10年以上続く人気シリーズ『救命病棟24時』の「小島楓」との意見もあるはず。
他にも、旦那の反町隆史と出会うきっかけとなった『GTO』や、教師と教え子の禁断の愛を描いた『魔女の条件』でのヒロイン役という声も上がりそうです。
こうして振り返ってみると、なんと当たり役の多い女優でしょうか。90年代後半にNHKの朝ドラ『ひまわり』で頭角を現してから2011年の『家政婦のミタ』まで、約15年にわたり断続的に主演作がヒットしているのは、おそらく彼女くらいなものでしょう。
そんな華々しい経歴に埋もれてしまい、今では知る人も少なくなりましたが、かつてフジテレビ系の人気バラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげです』にこの人気女優は出演していました。それもかなり際どい下ネタ系のコントにです。

デビューから4年間はあまり売れなかった松嶋菜々子


問題のコントが放送されたのは1995年ごろ。松嶋が1991年に旭化成水着マスコットガールに選出され、芸能界デビューを果たしてから4年後のことでした。この時、彼女は既に22歳。1992年にドラマ『社長になった若大将』で女優デビューを果たしたものの、それ以降特にパっとせず、不遇のキャリアを歩んでいた時期です。
そのためバラエティのワンコーナーとはいえ、当時、抜群の高視聴率をたたき出していた『みなおか』の準レギュラーに抜擢されたことは千載一遇のチャンス。ここで浮上のきっかけを掴むか、それとも今まで通り燻り続けるか……。並々ならぬ思いがあったことは、想像に難くありません。

「今日は私が上になるわ!」放送コードギリギリの言葉を連呼


「近未来警察072」と名付けられたこのコントにおける松嶋の役どころは、近未来警察の下っ端隊員。なにかにつけてタカさん、ノリさんの怒りを買い、「お前、何やってんだよ!」「ちゃんとしろよ!」などと言われながら、殴られたり蹴られたりします。
さらに暴行を加えられている最中、こんなことを言うのです。
「ああ、クセになりそう!私はあなた達のメスブタよ」「ダメ!中はダメ!外なら、外ならどこでもいいから!」「今日は私が上になるわ。そうよ。下からも突き上げて!」
どうでしょう。驚くほど卑猥な言葉ではないでしょうか。大物女優となって威厳たっぷりに振る舞う今の彼女からは、想像もつかない下品さです。しかもこれ、ゴールデンタイムの電波に乗っていたのだから隔世の感を禁じえません。

松嶋菜々子の裏の代表作は「近未来警察072」!?


この熱演をNHKの朝ドラ担当者が見ていたかどうかは定かではありませんが、この翌年に『ひまわり』のヒロイン役に決まり、そこから一気にスターダムを駆け上がっていった松嶋菜々子。清楚系女優の大御所となった今、「近未来警察072」が、黒歴史なのは間違いありません。一説によると、彼女の事務所がコーナーの映像全てを買収し、二度と再放送できなくしたとも言われています。
しかし今の松嶋菜々子があるのは、売れるために敢えてヨゴレを演じた「近未来警察072」を経たからであり、このコントはどう考えても彼女のキャリアの分岐点。20年以上前、思い切りよく下ネタを連呼した過去があったからこそ、輝かしい今の姿があるのではないでしょうか。

(こじへい)

※イメージ画像はamazonより家政婦のミタ vol.4(第7話 第8話) [レンタル落ち]
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