先日、実写映画『鋼の錬金術師』のキャストが新たに発表され、その中にディーン・フジオカの名前がありました。役どころは、作中屈指の人気キャラクター、ロイ・マスタング大佐。

全世界でシリーズ累計発行部数7000万部超を誇る原作の映画化とあって、撮影開始前から期待が集まる本作。その花形的役どころに配される辺り、今の彼の勢いが表れているというもの。

さて、ディーン・フジオカといえば、日本に先んじて海外で芸能デビューしていたことでも知られています。いわば、“逆輸入俳優”とでもいうべきキャリアを歩んできた彼ですが、過去にも似たような経歴のタレントがいたのを覚えているでしょうか? そう、金城武です。

さまざまな点で似ているディーン・フジオカと金城武


ディーン・フジオカと金城武。比べてみると、かなり2人は似ています。台湾と香港で活躍していたこと、広東語・英語などの複数言語を自在に操れること、日本デビューが連ドラであること、長身細身の甘いマスクであること……。
もはや、デジャヴといっても差し支えないそっくり具合です。

2人の大きな違いとしては、ディーンが福島生まれの千葉育ちという純然たる日本産なのに対し、金城武の出生地は台湾。1973年に、日本人の父と台湾人の母の間に生まれ、現地の外国人街で育ちました。
タレントとしての第一歩を踏み出したのは高校時代。清涼飲料水のCMにおける演者の一人として、スカウトされたことがきっかけです。以後、香港を中心に、映画俳優として数々の作品に出演していきます。

中でも彼の出世作となったのが、トニー・レオン、フェイ・ウォンなど、日本でも後に知名度を獲得するスターと共演した『恋する惑星』。ウォン・カーウァイが監督した本作は、その年の香港の映画賞を総なめしただけではなく、全米公開までされて大きな話題を呼びました。

1995年に日本デビューした金城武 宮沢りえとキスシーンも


そんな金城が日本デビューを果たしたのは1995年。『聖夜の奇跡 あなたの好きな愛はどれ?』というフジテレビ系のスペシャルドラマに出演した時のことです。
この作品における彼の役どころは、日本にやってきた台湾人留学生。相手役を務めた宮沢りえとキスシーンも披露しています。

その後、邦画出演の要請もあったようですが、国外でのスケジュールがびっしりと埋まっていたため、お断りしたのだとか。
彼の父方の祖国におけるブレイクは、1998年『神様、もう少しだけ』への出演まで待たねばなりません。

深田恭子と金城武の共演 日本中の涙を誘った『神様、もう少しだけ』


恋人の片方が不治の病に冒されることによって生じる葛藤と、永久なる愛の確認……。『セカチュー』や24時間テレビ系のドラマなどで幾度となく使われた「お涙頂戴」のフォーマットでつくられたのが、『神様、もう少しだけ』です。
ここで金城は、HIVに感染した女子高生と恋に落ちる、音楽プロデューサーの役を熱演。彼の相手役を務めたのは、深田恭子。美男美女による悲劇の物語に、日本中は号泣しました。
結果的に金城は、これがドラマデビュー作となった深田と共に、全国区の人気を手にしたのです。

その後、中山美穂と共演したドラマ『二千年の恋』、本広克行監督の映画『スペーストラベラーズ』、プレイステーション2用のゲームソフト『鬼武者』など、さまざまな作品に出演した後、日本からは徐々にフェードアウトしていった金城武。今では、活動の拠点を国外に戻しているようです。
ディーン・フジオカもいずれは、この先輩逆輸入俳優のように、日本に別れを告げる日が来るのかもしれません。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonより神様、もう少しだけ [DVD]