女性アイドルグループ・アリス十番の「桜雪」という人物をご存知でしょうか? 彼女は芸能活動と並行して勉学にも勤しみ、一浪のすえ、なんと東京大学への合格を果たしたアイドル。まさに文武両道の究極系ともいうべき存在です。

調べてみると、芸能界に籍を置きながら偏差値の高い大学へ入学した女性アイドルというのは、トリンドル玲奈(慶應義塾大)や川島海荷(明治大学)など、意外に多いもの。

そんな「高学歴女性アイドル」の元祖ともいうべき実例が、今から1998年に誕生しました。広末涼子が早稲田大学への入学を果たしたのです。

広末涼子の早大入学、一般紙も記事に


90年代後半。当時ティーネイジャーだった広末涼子はノリにノッていました。女優として出演した『ビーチボーイズ』『聖者の行進』などの連続ドラマは軒並み高視聴率。歌手としても、『MajiでKoiする5秒前』や『大スキ』がスマッシュヒットを記録するという、爆発的人気を博していたのです。


こうした絶頂期に名門私大へ入学するとあって世間は騒然。同じ清純派「スタア」として、かつて早稲田の第二文学部に合格した吉永小百合とも比較され、ワイドショーや週刊誌はこぞって彼女の動向に注目。一般紙までもが記事にするという加熱っぷりでした。

批判も多かった広末涼子の入学


もっとも広末の早大入学を、誰しもが手放しで歓迎していたわけではありません。その最たる理由は、彼女の入学方法がいわゆる「一芸入試」だったことに起因します。
ペーパーテスト以外で評価するというこの受験システムには、かねてより批判的な向きが多く存在しました。その潜在的にあった不満が、この一件をきっかけに、噴出した格好だったと記憶します。


実際、教育論者からは「早稲田は売名のためにアイドルを入学させた」と批判されていたし、ニュース番組のインタビューを受けた早大生は「一生懸命勉強して入学したのに、特別枠で入学するのはちょっと納得できない」と怒りを露にしていたものです。

3千人超もの人が押し寄せた初登校


そんな彼女がキャンパスに初登校したのは、入学式から3ヶ月近くも経過した6月末。当日、正門前には取材陣が大挙して訪れ、そこに学生やファン、野次馬なども詰めかけ、なんと3千人超もの大群衆が集まったといいます。

講義終了後、早稲田のシンボル・大隈講堂前でマスコミ各社の記念撮影に、にこやかな表情で応じた広末。しかしその後、彼女が下校しようと正門へ向かう際、とてつもないパニックになります。
報道陣と集まった観衆が少しでも広末に近づこうと、四方八方から押し寄せるものだから、もう、もみくちゃ。
「どさくさ紛れにお尻まで触られた」とは後に語られた本人の弁。関係者にガードされながら、なんとか迎えの車に乗り込んだものの、笑顔はすっかり消えうせて涙目になっていたそうです。

結局、広末のキャンパスライフはどうなったのかというと、初登校以降、全く授業に参加しなかったとのこと。単位もほとんど取得しないまま、入学から4年が経過した2003年10月には「女優業に専念したい」との理由で退学を発表。一体、あの騒ぎは何だったのでしょうか……。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonより広末涼子Perfect Collection