「彼女の存在が公になるとファンが減る」

これは、ウエストランドというお笑いコンビのツッコミ担当・井口浩之による発言。このコメントに対し、事務所の先輩・爆笑問題の太田光は自身のラジオで「ジャニーズか、お前は!」と痛罵していました。
お笑いは、女子からキャーキャー言われるためにやるものではない。太田にとって、井口のようなアイドル気取りの芸人は邪道に感じたのでしょう。

イロモノと呼ばれていた芸人


かつて、芸人はイロモノと呼ばれていました。寄席のめくりで、落語家・講談家が黒文字で書かれていたのに対し、漫才師を含むそれ以外の芸事に及ぶ者は色文字で書かれていたことに由来します。
寄席での落語家・講談家>それ以外という序列は、そのままテレビの世界にも適用されていたらしく、漫才師が歌手や俳優と同じ番組に出る際は、「イロモノは端っこの方行っといて」などと邪険に扱われたといいます。

そんな昔と比べて今は、芸人の立場が飛躍的に向上したのは間違いありません。しかし、芸人の本分はあくまでも人を笑わすこと。
時には自分の汚い部分をも曝け出し、ネタにするくらいの気概が必要なのではないでしょうか。
そういった意味で10数年前、劇団ひとりが見せたのはまさに、イロモノとしての真骨頂でした。何せ笑いのために、カメラの前で脱糞したのですから……。

日テレの深夜番組『カミングダウト』で事件は起こった


事件が起こったのは、2004年~2005年に放送していた深夜バラエティ『カミングダウト』(日本テレビ系)のとある回。
これは、毎回4組のゲストがそれぞれ順番に“衝撃の告白”をしていき、他の3組がその告白をウソか本当か見破っていくという、プレイヤー同士のだまし合い・さぐり合いを楽しむ番組です。企画意図としては、『食わず嫌い王決定戦』に近いといえるでしょう。

この日、劇団ひとりは、プレイヤーの一人として登場します。
他のプレイヤーは、おぎやはぎ、エレキコミック、だいたひかる。当時は、『爆笑オンエアバトル』『エンタの神様』といったネタ見せ番組の全盛期。その時流に乗り、頭角を表していた参加芸人たちの中で、一際目立とうとしたのでしょうか。彼の告白はことさら衝撃的なものでした。

「劇団ひとりは今 ウンコをもらしている」

「技術じゃない。大事なのは魂」と熱弁するひとり


当然、他の3組から「えっ、今!?」と、ガヤが入ります。
「僕だって…」。一呼吸おいてから、ひとりは語り出します。「僕だってウンコをもらすのは、本望ではありません」。すかさず「そりゃそうだよ!」と全員から総ツッコミ。一体なぜ、大の大人が公衆の面前でもよおさなくてはならないのか……。呆れ気味にひとりを見る芸人たち。
しかし、彼のフィロソフィーは実に明確でした。

「これからの芸能界を担う若手として、破壊的な笑いが必要なのよ」。技術じゃない。大事なのは魂なのだ、と。鬼気迫るプレゼンテーションに、さっきまで嘲笑していた芸人たちも、同じ道を志す同士として、思わず聞き入ります。

劇団ひとりの凄すぎる芸人魂


「今の気分は?」そう問われると、ひとりは「川島省吾(本名)としては今すぐ帰りたい」「でも、劇団ひとりとしては“やってやったぜ”って感じだね!」と答えていました。
まるで、スタッフの手違いでホテルのしょぼい部屋をあてがわれた際、「俺はいいけどYAZAWAがなんて言うかな?」と言った、矢沢永吉のようなプロ意識ではありませんか。

真実か嘘かを判断する「ダウトタイム」では、エレキコミックのみが「ダウト」を選択。それに対しひとりは「エレキコミックがくすぶってる理由って、そこだと思う」とバッサリ。
結局、彼は大人用のオムツの中に、本当にもらしていました。実際に内容物を見て、驚愕する他の3組。最後に「頭がおかしいのかも知れないけど…」と前置きした上で、「今、ちょっとおしっこもらしてみた」と言って、スタジオの爆笑をさらったひとり。

こうした、笑いのためなら何でもやる芸人魂があったからこそ、彼は売れていき、今もなお第一線で活躍を続けられているのかも知れません。
(こじへい)


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