90年代を代表するアニメといえば、95年に放送され、放送後も様々な憶測を呼び社会現象を巻き起こした『新世紀エヴァンゲリオン』を挙げる人が多いだろう。独特の演出、回収されない伏線、心くすぐるキーワードの数々など、斬新さが節々に見られるアニメだった。


家庭の夕飯時が18時頃だった時代にまさかのベッドシーン


95年「新世紀エヴァンゲリオン」放送時、食卓を凍りつかせた問題のシーン
『エヴァンゲリオン』画像はAmazonより

そんなエヴァに、筆者はある思いを抱いている。90年中盤はまだ夕飯が18時頃から、遅くとも19時頃からという家庭も少なくなかったように思う。筆者の家も当時は遅くとも母が18時半には夕飯の支度を始めていた。バレンタインデーだったその日、放送されたのは『新世紀エヴァンゲリオン』第弐拾話「心のかたち 人のかたち」だった。

母が作る夕食を待ちながら放送を見ていたとき、問題のシーンは刻々と近づいてきた。それは夕食の支度が終わりかけ、テーブルに続々と食事が並び始めたころ。アニメ放送開始から、21分8秒が経過したころだった。


なんとTVアニメでベッドシーンがおっぱじまったのである。とはいえ時計の針はまだ午後7時も指していない。画面に映っているのは、ベッドサイドに置かれた飲みかけのビール、吸い殻の入った灰皿、そして破られた正方形の小袋だけ。映像では行為を確認することはできなかったが、誰にでもそれとわかるのは、46秒も響き渡る葛城ミサトの喘ぎ声があったからだ。

食卓周辺、母と思春期真っ盛りの少年少女しかいない現場の空気は氷河期のように凍りつく。少しでも性的なことを口にするのも気恥ずかしい年頃だ、気の利いた冗談で場の空気を弛緩させることすらできない無力感を感じながらも、聞き逃してはなるまいとその耳だけは喘ぎ声に集中していたことを覚えている。


ほかにもいろいろ。微グロ描写も多かった


エヴァンゲリオンでは、当時としては微グロ描写も多かった。テレビアニメ版では人に関わる描写こそ少なかったものの、使徒と呼ばれる謎の生命体の捕食シーンだったり、エヴァンゲリオンの破壊や“最後のシ者”である渚カヲルの最後の瞬間は、耐性の低い人にとっては見ることがきついシーンであることが多かった。しかもそれが前述の通り夕飯時であったことを考えると、食欲減退効果は非常に高かったのではないだろうか。

テレビアニメ版はこれでもまだ控えめだった。劇場版(旧劇場版と呼ばれる)となる『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』では人同士の殺し合いや、エヴァシリーズによるエヴァ弐号機の捕食などのグロ描写、惣流アスカラングレーのたわわな胸を見て発情した主人公・碇シンジの自慰行為といった性的描写など、カオスの塊だった。


2020年に公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で一応の完結とみられるエヴァンゲリオン。今からでもテレビアニメ版第1話から『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』までを見返すと楽しそうだ。

(空閑叉京/HEW)