「超光戦士シャンゼリオン」が従来の特撮ヒーロー像をぶっ壊した
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昭和の時代のヒーロー像は基本的に皆真面目で、世界平和のために正義を振りかざして悪党どもを成敗するという使命感を持つ優等生タイプだった。平成に入ると、ヒーロー像は昭和のそれとは違ったものになる。
結果的に平和になっているというだけで、彼らが地球の平和を守るというような使命を持って行動しているわけではないことも多くなったのだ。このようなヒーロー像の流れを作ったのが『超光戦士シャンゼリオン』である。

従来のヒーロー像から大きく外れた存在


『超光戦士シャンゼリオン』に登場するシャンゼリオンは、光り輝くクリスタル感を漂わせた透明素材の重甲ボディを特徴とするヒーロー。見た目からして従来のヒーローとは一風変わった出で立ちだったが、それ以上にキャラクターがこれまでのヒーロー像とは一線を画していた。

本来シャンゼリオンの中の人になるのは正義の熱血漢のはずだった。しかし、ちょっとした運命のいたずらのせいで、借金で散財してしまうような遊び人の主人公がシャンゼリオンになってしまったのがそもそもの間違いの始まり。ヒーローなのに卑怯な手を使ったり、自分が助かるために敵に命乞いしたりと、それまでのヒーローにあるまじき行為を平然とやってのけるシャンゼリオン。
その情けない姿は、ある意味人間味あふれるヒーローだった。

濃厚な相関図とギャグ要素が魅力


シンプルな敵と味方という構図だった特撮ヒーローものに、シャンゼリオンはカオス感を加えてくれた。例えば本来シャンゼリオンになるはずだった熱血漢は、だらしなく不真面目な主人公がシャンゼリオンの力を手に入れたことに対して嫉妬するあまりに、敵サイドに落ちてしまう。その結果、謎のヒーローに変身できるようになって舞い戻ってきたが、その変身方法が梅干しを食べることだったり、変身ヒーローになっている間の記憶が一切なかったりと、とにかく損な役回りで笑いを誘った。

また、敵味方の境界を越えて恋愛に発展することさえあった。敵サイドを見ても、ヒーローに憧れる怪人や幹部と対立する怪人、人間関係に悩んで胃潰瘍になる怪人、うつ病で自殺してしまう怪人がいるなど、従来のトップダウンで一枚岩の敵組織とは異なっていたのも物語に深みを与えた。

謎を残す終わり方


特撮ヒーローは最後には悪に打ち勝って、一時の平和が訪れて万歳というのがお決まりだった。
しかし、従来のヒーロー像をことごとく打ち破ってきた『超光戦士シャンゼリオン』の最終話はやはり一味違った。同作は全39話完結だが、それまでの38話分はまるで夢物語であったかのような扱いだったのだ。平行世界の話だったのか、それとも夢オチだったのか、人類滅亡寸前まで追い込まれたシャンゼリオンが膨大な数の敵の中に特攻していき、その結果がわからないまま物語は終わりを迎える。

スッキリしない終わり方は、多くの人をモヤモヤさせた。絶望的なラストシーンからは、きっと勝ったはずだなんていう安易な予想では済まされないものを感じる。様々な謎を残して物語は終了したが、多くの謎や登場人物の複雑な関係といった物語の深さは、それ以降にスタートした平成ライダーシリーズに大きく影響を与えている。


(空閑叉京/HEW)