インパクトのある見た目は人々の記憶に残りやすい。サッカーコロンビア代表選手のバルデラマ(本名:カルロス・アルベルト・バルデラマ・パラシオ)も、90年代を代表する強烈なインパクトを残した選手の1人だ。
サッカー界において、これほどまでにひと目見ただけで忘れられないビジュアルの選手は、今後もなかなか出てくることはないだろう。

リアルライオン丸!獅子の如き見た目



とにかくバルデラマは髪型が強烈だった。日本でも、どんなプレーをしていたかは忘れてしまっても髪型だけは覚えているなんていう選手もいるだろう。

例えば90年代に鹿島アントラーズで活躍したアルシンドは、宣教師フランシスコ・ザビエルのような髪型で一躍話題となったし、日韓共催となったワールドカップでは元イングランドの代表デビッド・ベッカムのモヒカン頭がベッカムヘアと呼ばれて流行した。元ブラジル代表のロナウドにいたってはまさかの大五郎カットで一部ではベッカム以上の話題となった。

しかし、そんな個性的な髪型の面々も、バルデラマには一歩及ばない。なにせバルデラマは髪型がリアル“ライオン丸”。
ショートパスタ「フリッジ」にも似たチリチリヘアは、アフロのようで巨大なマリモのようだった。それに加えて金髪であったことから、コートのどこにいても目立ちすぎてすぐにわかる。テレビで見失わない率の統計があればぶっちぎりでナンバー1だろう。

強烈なインパクトの割に繊細なプレイが魅力


見た目が強烈だと、プレイぶりもさぞかし豪快なものに思えてしまう。だが、それは先入観による思い込みにすぎない。もちろん、野性的なプレーを感じさせる場面も多々あったが、彼の右足から正確無比に通されるパスはその繊細さで多くの人々を魅了した。
特に密集地帯に入り乱れる両軍の中から、確実にゴールに結びつく味方へつなぐパスはまさに圧巻だった。

その最たる例が90年に開催されたイタリアワールドカップの1次リーグ、強豪西ドイツとの対戦だ。引き分け以上の結果を残さないと1次リーグ敗退が決まるという大事な1戦。コロンビアが試合終了間際の88分にゴールを許し、敗退はほぼ決定的かと思われた矢先の90分に、バルデラマが放ったスルーパスが同点ゴールへと結びつき、決勝トーナメント進出を決めたのだ。そのときの様子を西ドイツ主将マテウスは「彼のパスはシルクの糸のようだった」と評した。

バルデラマは1999年にイギリスの雑誌『ワールドサッカー』が選ぶ「20世紀の偉大なサッカー選手100人」に、さらには2004年のFIFA100記念式典では「偉大なサッカー選手100人」に選出された。
現役引退後の動向にも注目されていたが、彼は指導者の道を歩まずコメンテーターとして、今も当時と同じように金髪チリチリ頭がトレードマークのライオン丸姿のままで活躍している。

(空閑叉京/HEW)