2016年、京都市美術館で開催された「ダリ展」のポスターに、タレントのルー大柴の顔写真が採用された。理由はダリに似ているから。
本物のダリとルーの顔写真が並んだそのポスターを見ると、たしかに一瞬どちらがダリなのかわからないほどそっくりだ。

ルーは、そのダリ顔・短足の体をファッショナブルなスーツでめかし込み、「ルー語」とよばれるヘンテコな英語を駆使して90年代の芸能界を席巻した。最近じわじわと人気を取り戻しつつある、ルー大柴の芸能活動を振り返る。

ルー用語の基礎知識


1989年、ルーはアデランスのCMでの「トゥギャザーしようぜ!」というセリフでブレイクした。その後、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)のレギュラーや、『浅草橋ヤング洋品店』(テレビ東京系)の司会者として90年代のテレビ界で活躍していった。その人気の要因は、なんといってもルー語と呼ばれるキテレツな英語にある。

ルー語の基本は直訳だ。
ルーは、日本語の中に突然直訳の英単語を挿入し独特のルー語をつむぎだしていった。特にことわざや慣用句でルー語化が多用される。
一部例を挙げると、ルー語には次のようなものがある。

■ちりも積もればマウンテン
■スリーデイズ坊主
■七スリップ八ゲラップ
■あうんのブレス
■虫のインフォメーション
■コロンブスのエッグ


ルー語は人名にも発展することがあり、俳優としての恩師である勝新太郎を「ビクトリーNEW太郎」と呼ぶこともある。
このようなルー語をトークの中にちりばめ、ルーは子供から大人まで幅広い支持を集めていった。

ジュリー・アンドリュースにあこがれて旅人に……


そんなルー大柴の活動の原点はジュリー・アンドリュースにあるという。若き日のルー少年は、『メリー・ポピンズ』や『サウンド・オブ・ミュージック』といった映画の主演で知られるミュージカル女優のジュリー・アンドリュースにあこがれていた。


ルーは公式ブログで次のように語っている。

「ヤングの頃から外国スターのポストガードを集めています。コレクションとまではいきませんが、いくつかイントロダクション(紹介)します

ファーストタイムにバイ(買う)したのは、ジュニア・ハイ・スクール・ステューデントの時。『サウンド・オブ・ミュージック』をウォッチしてエモーション(感動)、ジュリー・アンドリュースからスタート

スタディデスクにデコレートして、『あなたはグレート!』と、スマイルしていました」
(ルー大柴オフィシャルブログ『TOGETHER』より引用)

あこがれは、やがてルーをタレント業へと向かわせた。ちなみに先ほどから便宜上ルーのことを「タレント」と呼んでいるが、ルー本人は職業を旅人と名乗っている。
ルーは、ジュリー・アンドリュースを目指して旅人となり、なぜか旅路の果てに現在の芸風にたどり着いてしまった。


再ブレイク! 「ルー語カレンダー」がヒット


ルーはここ数年、再びブームになりつつある。日めくりカレンダー『きょうのルー語』は、2015年の発売以来、現在も売り上げを伸ばしている。くどすぎる胃もたれ系のネタと思われがちなルー語が、癒し系のユーモアとして再評価されているのだ。

たしかにルーの芸風は、ルー語を駆使して大声で前に出てくるというもので、他人を傷つけることがない。SNSで誰かを攻撃して炎上し、さらにそれに反応して飛び火するといったギスギスした話題が多い昨今、いい意味で「ただくだらないだけ」のルーの芸風は世の中から望まれる要素がありそうだ。

世知辛い世の中だからこそ、ルーにはより一層トゥギャザーしてほしい。


※イメージ画像はamazonよりルー語大変換