現在、日本人最高の投手は誰だろうか? 大谷翔平、ダルビッシュ有、田中将大など様々な意見があるはずだ。
彼らに共通するのはストレートの球速が150km/hを超える点。
現在ではトレーニング理論の発展などもあってか、高校生で150km/h超えする投手もたびたび現れる。

しかし、これまでのプロ野球を見ていくと、球速は遅いながらもかなりの実績を残した投手もいる。元中日の山本昌やキャリア後半の桑田真澄(元巨人→パイレーツ)、現役選手だと現シカゴ・カブスの上原浩治などが挙げられるだろう。
今回はそんな彼らがストレートについて、どんな考えを持っているか、著書から紐解いていこう。

桑田真澄が語るストレート論


PL学園時代、輝かしい実績を残したあと、1985年ドラフト1位で巨人に入団。その後、巨人のエースとして通算173勝を挙げた。
キャリア全盛期には150km/hに近い球も投げていたが、肘の手術後は140 km/h前後のスピードながら打者を抑える姿が見られた。

「遅球」投手のストレート論、山本昌や上原浩治が明かした技術とは?
※写真はイメージです

1998年に発売(2007年文庫化)された『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』によると、「ストレートは、とにかくコントロールが大事」と語る桑田。現在も解説として、たびたびアウトローに投げることの重要性を説いている彼らしい考えだろう。
また、桑田はコントロールに加えて「手元でキュッと伸びてくれること」が大事だと説く。桑田は140 km/hに満たないながらも伸びのよいストレートを投げていた、巨人時代の先輩・江川卓が印象的だったとしている。

さらに同書では、具体的なストレートの投げ方も紹介。桑田によると、上から投げおろすイメージで体全体を使って投げ、球の回転にだけ気をつけるという。

確かに引退後に出演していた『S☆1』(TBS系列)においても、コントロールされた良い球を投げるためには、体全体を大きく使ったフォームの必要性を挙げている。そのためには、野球界では常識とされている「利き腕の肩を下げて投げるな」という考えは誤りであり、「肩を下げて投げるべき」と言うのが、桑田の考えだ。

また、球のスピードには拘りがないイメージである桑田だが、「最低でも140 km/hは切りたくない」と著書の中で明かしている。

山本昌が明かした「投球3原則」


山本昌は140 km/hに満たない球がほとんどながら、通算219勝を挙げている。
そんな彼が引退後の昨年に出版した『ピッチングマニア』によると、投げることの3原則として、「大きく使って投げる」「上から投げる」「リリースで叩く」の3つを挙げている。
「大きく使って投げる」「上から投げる」という点では、桑田と共通の考えを持っていることが分かるだろう。
「遅球」投手のストレート論、山本昌や上原浩治が明かした技術とは?
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また、山本の現役時代、彼の130 km/h台のストレートに打者が差し込まれるケースが頻繁に見られた。
これについて山本は、球を打者として見たことがないので、はっきりは分からないと前置きしつつも、「やはりキレがあったのでは」としている。
では、キレがあるストレートを投げるにはどうしたら良いのだろうか。山本は、キレには球の回転数がおそらく関係していると考えており、回転数を上げるためには原則通り、「体を大きく使って、しっかり前に移動して、上から叩く」ことが大事だと語った。

上原浩治がメジャーで活躍できる理由


最後に紹介するのは、現在も現役メジャーリーガーとして活躍する上原浩治だ。
2014年に出版された『覚悟の決め方』では、89マイル(約143km/h)ほどのストレートで強打者を抑えられる理由として、コントロールとキレを挙げている。
「遅球」投手のストレート論、山本昌や上原浩治が明かした技術とは?
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まずはコントロールについて。
四球に関する数値(K/BB、WHIP)がメジャー歴代でも屈指の凄さを誇る上原は、「コントロールもひとつの球種」と自信を覗かせている。
そんな上原がコントロールの良くなった理由は、高校時代にバッティングピッチャーを務めて毎日何百球も投げ、無理のない自然なフォームが身についたこと。そしてキャッチボールをとても大事にしていることだという。
コントロールを良くする方法としてキャッチボールが重要という点は、山本も以前実施したインタビューで次のように語っている。
「キャッチボールでは、一球たりとも気を抜いて投げていないです。意識していたことは指先の感覚で、しっかり指にかかっているか投げるたびにチェックしていました」

そして次に重要なのがキレ良く、伸びのあるボールを投げられるかだ。
遅い球で抑えるためには「バッターの体感速度を上げるか」が重要と説く上原は具体的な投げ方についても本書で言及。
上原によると、「ボールを放す時の人差し指と中指のひと押しを大切にしている」らしい。この2本指でしっかりとボールを押し出せるかが、キレ良い球を投げる上で重要だとしている。

こうして見ていくと、150km/h超えのストレートを投げずとも活躍するには、コントロールの良さが必須であり、なおかつキレや伸びは大事であることが分かるのではないだろうか。


※イメージ画像はamazonより不変
※イメージ画像はamazonよりNumber PLUS 桑田真澄 完全復刻版 (Sports graphic Number plus)
※イメージ画像はamazonより山本昌という生き方