誰にでも原点がある。生まれて初めて自分の小遣いで映画館へ行って観た映画は『ターミネーター2』だ。


中学1年の正月明けの冬休み、お年玉を握りしめて埼玉の田舎町のボロボロの映画館へ、電車に乗って出かけたのをよく覚えている。学校の終業式前に「兄ちゃんが言ってたけど『ターミネーター2』がマジ凄いらしい」と盛り上がって、じゃあ俺らで観に行ってみようという話になった。

実際、『ターミネーター2』観賞後、「101回目のプロポーズより面白ぇ…」なんつって座席からしばらく立てないくらいの衝撃を受けた。もう20数年前の出来事だ。あの映画館はとっくに潰れたし、一緒に行ったF君は消防士になり、K君は郵便局員、俺は物書きになった。
……って、死ぬ間際の爺さんのように過去を振り返っているうちにふと思ったけど、あれ以来『ターミネーター2』をしっかり見返していない気がする。

もちろん幾度となくテレビで再放送されている名作だし、特別編やプレミアム・エディションとソフト化されまくり、続編やテレビドラマも作られた。その都度、目にすることはあっても、1本を通じて91年劇場公開のオリジナルの英語字幕版をじっくり観たことはないと思う。

俺も大人になった。果たして、子どもの頃のマイNo.1映画は、大人になってから観ても面白いと思えるのだろうか。それとも、汚れちまった悲しみに沈んでしまうのか。緊張しながら、『ターミネーター2』の再生ボタンを押した。


西暦2029年……『ターミネーター2』のストーリー


西暦2029年のロサンゼルス、「30億の人命が核戦争で失われた1997年8月29日、生存者はこの日のことを“審判の日”と呼んだ」というハードなナレーションから機械(スカイネット)と人類の戦いの凄惨さを説明。

人類抵抗軍リーダーのジョン・コナーを少年時代の内に殺してしまおうと未来から1994年に送り込まれたのが、最新型ターミネーターT-1000(ロバート・パトリック)。そして少年ジョンの危機を守ろうと未来のおっさんジョンが送り込んだのが、10年前にジョンの母サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)を襲ったT-800・モデル101型(アーノルド・シュワルツェネッガー)だ。

この早口言葉のような複雑なシナリオを開始5分で簡潔にまとめて見せ、あの有名すぎる「ダダンダンダダン!ダダンダンダダン!」のBGMと同時にタイトルドーン。完璧だ。どうしようもなく完璧だ。

あれっ? 『ターミネーター2』は「Judgment Day」って副題ついてたの? という意外な発見は置いといて、この映画が製作された91年は、まだ「1999年に向けた終末感」という設定が一種の流行りだった。
その中でも、妙なリアリティとエンターテインメントとしての面白さを高いレベルで両立させていたのが『ターミネーター』シリーズだったように思う。

気が付けば、作中の1997年の審判の日より、おっさんジョンがいる2029年の方が現代から近いリアル。思えば遠くに来たもんだ。

日本でも人気になった出演者たち


この作品で一気にスターになったのが、少年時代の10歳のジョンを演じたエドワード・ファーロングだ。金髪サラサラヘアのザ・美少年という風貌で本国アメリカだけでなく、日本でも人気爆発。
なんと映画公開翌年には、学ラン姿でセーラ服の日本人美少女と絡むマルちゃんホットヌードルのCMにまで出演している。
大黒摩季の「DA・KA・RA」が流れる中、キャッチコピーが「初めての、H」って今なら完全にアウトだろう。

ちなみにシュワルツェネッガーも栄養ドリンク「アリナミンV」のCMで当時トップアイドルの宮沢りえと共演。日本にシュワちゃんブームを巻き起こした。
宮沢りえのヌード写真集を見たシュワちゃんは異様なハイテンションでCM撮影に臨んだという何だかよく分からない逸話も残っている。
 
というわけで、そんな小ネタも頭の片隅に置いて観ると『ターミネーター2』は子どもの頃より面白いどころか、時間が流れ出演者も自分も年を重ねた分、大人目線の新たな面白さを発見することができた。

これこそ最高の映画体験だ。自分でも意外だったのが、中1のときは年齢の近い10歳のジョンに感情移入していたのに、今はシュワルツェネッガー演じる旧型ターミネーターの姿に涙しているこの感じ。ボロボロまで働いて、誰かを身体を張って守り、最後は潔く散る。泣けるぜ。とどのつまり、ターミネーターとはおっさんの鑑なのである。

人生に必要なことをすべて教えてくれた『ターミネーター2』、ありがとうシュワちゃん。

地球上で最も有名なアクションスター、アーノルド・シュワルツェネッガーは今年7月で70歳になる。



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『ターミーネーター2』
映画公開日:91年8月24日
監督:ジェームズ・キャメロン 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、エドワード・ファーロング、ロバート・パトリック
キネマ懺悔ポイント:100点(100点満点)

映画序盤、ジョンの運転するバイクの後ろに乗った少年が持つラジカセから爆音で流れる音楽はガンズ・アンド・ローゼズの『You Could Be Mine』。「なんだこのカッコよすぎる音楽は……!?」と当時多くのボンクラ中学生(俺)はターミネーター2をきっかけにガンズを知ったのである。
(死亡遊戯)


※イメージ画像はamazonよりターミネーター2 特別編(日本語吹替完全版) [DVD]
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