前回、放送中止や内容差し替えになってしまった90年代CMについて語ったが(記事はこちら)、今回はその続き。90年代後半に絞って振り返ってみよう。


1995年 朝日ソーラー「太陽熱温水器」


菅原文太の「朝日ソーラーじゃけん」という決めフレーズで有名なこちらのCM。90年代中期は西田敏行バージョンもヘビロテされ人気を呼んでいる。
映画『ブルース・ブラザーズ』のジョン・ベルーシよろしく、黒いスーツにサングラスでビシッと決めた西田敏行が屋根の上で踊り歌うCMだ。

CM冒頭、「屋根持っているかーい!?」と呼びかけるのだが、阪神・淡路大震災が起こった際に被災者への配慮から、セリフが「天気出てるかー!?」に差し替えられている。
これは機転が利いた変更と言えそうだ。

1996年 日産自動車『スカイライン』


牧瀬里穂のセリフであり、キャッチコピーでもある「男だったら、乗ってみな。」に対して、「男女差別」とクレームが付いてしまう。
牧瀬がキーを投げ付けるシーンとともにこのセリフを告げるため、「性行為をイメージさせる」とのクレームもあったようだが、想像力豊かすぎな気がしないでもない。

CMで紹介されるのは9代目スカイラインとなるR33型。
「本流グランドツーリングカー」のコンセプト通りの男らしいスタイルであり、イメージもピッタリだったのだが……。
結局、「キメたかったら、乗ってみな。」に変更となった。

1997年 日本新聞協会「新聞週間キャンペーンCM」


誰もが聞いたことのある童謡『やぎさんゆうびん』をモチーフに、熱心に新聞を読む白ヤギと新聞を読まずに食べてしまう黒ヤギのキャラクターの対比で、新聞の購読を面白おかしく促す内容だった。
しかし、人権擁護団体から「黒人差別を助長する」との講義を受け放送中止になっている。さすがに飛躍した発想な気もするが……。

もっとも、猿を黒人に見立てた内容で放送中止に追い込まれたCMは少なくない。
2005年のマンダム『ギャツビー・ペーパー洗顔』のCMでは、黒人男性がギャツビーで汗を拭く姿を、同じような姿をしたチンパンジーが「猿真似」する内容で抗議を受け、2008年のイー・モバイルのCMでは、当時のオバマ大統領ブームに乗っかり、オバマ大統領の演説を猿を使ってパロディ化し、放送中止となっている。


同じ過ちを繰り返しているのは、黒人差別自体が日本人には馴染みが薄いためだろうか?

1998年 たばこCM全般


実は、日本たばこ産業(JT)の自主規制により、98年4月にはTV・ラジオでのたばこ銘柄のCMの自主規制が始まり、2004年には財務省により指針が改定され、TV・ラジオでのCMは全面禁止となっている。
『Marlboro(マールボロ)』『LARK(ラーク)』など、ダンディズムあふれるクールなCMが多かったのになぁ……。

筆者にとって、ひと際印象深いのが『Lucky Strike(ラッキーストライク)』。最後に流れる英語の決めフレーズにはついつい口ずさんでしまう不思議な魅力があった。
ちなみにこのフレーズ、「Go where the flavor leads you!Go with Lucky Strike!」との説が濃厚である。

1999~2000年頃 殺虫剤CM全般


当時の殺虫剤のCMは、3DCGなどでリアルに描かれた害虫の映像が使われることが多かった。中には、実物以上にグロく描き、必要以上に嫌悪感を抱かせるものまで登場。
こういった傾向に対し抗議が多く寄せられたため、以降は表現を控えるようになっている。
確かに、食事中などにリアルすぎる害虫が大写しになるのは気分がいいものではない……。

初の長編フル3DCGアニメ『トイ・ストーリー』が公開されたのが95年。世界的な大ヒットを受け、当時は3DCGの技術が様々な映画やゲームなどで活用され、最先端のトレンドとなっていたが、どうやら使い方を間違ってしまったようである。

この頃の殺虫剤のCMといえば、アース製薬の『アースゴキジェット』のロボコップ風のCMが印象深い。本家『ロボコップ』に版権料を支払い、ハリウッドで撮影。
CGをバリバリ多用し、ゴキブリは異星のクリーチャーのような姿で描かれるなど、予算も力の入りようも桁違いのスケールだった。

しかし、上記のようなクレームもあり、早期で打ち切りに。記憶に残る内容ではあったが、購買には結びつかず費用対効果は最悪だったようだ。

1本の電話だけでも放送中止に追い込まれてしまうかも知れないCMの世界。もしかしたら、あなたのお気に入りも明日には「封印」されてしまうかも……。

※イメージ画像はamazonよりささげたい、あなたに…