フジテレビの音楽番組『LOVE LOVE あいしてる』にSHAZNAが初出演した際、「彼ら」の素性を全く知らない吉田拓郎がそのヴィジュアルについてこう言っていました。
拓郎が誤認してしまうのも、無理はありません。
「メティラー♪」印象的なフレーズが話題に
80年代に一世を風靡したバンド、カルチャー・クラブ。そのヴォーカリスト、ボーイ・ジョージリスペクトな風貌のIZAM率いるSHAZNAが結成されたのは、今から24年前となる1993年のこと。
アルバム3000枚を完売させるなど、インディーズで抜群の実績を誇っていた彼らは1997年8月27日、シングル『Melty Love』でメジャーデビューを果たします。
「メティラー離ーさなーい♪」と歌う必殺のサビは、“本家”の代表曲『カーマは気まぐれ』の「カマカマカマカマ~♪」に、勝るとも劣らないキャッチーさ。
それゆえ、瞬く間に世間へ浸透。オリコン初登場は5位だったものの、徐々に順位を上げていき、最終的には2位へランクイン。総売り上げ枚数は88万枚という、大ヒットを記録しました。
SHAZNAがいきなりブレークした理由は
それにしても、なぜSHAZNAはデビュー早々、いきなりブレイクしたのでしょうか? 理由はさまざま考えられますが、一番の要因はキワモノ感漂う風貌に反して、歌っていたのが誰にでもわかる恋愛歌謡だったからでしょう。
90年代のヴィジュアル系といえば、ダークでヘヴィーな曲を演りたがるバンドばかり。独自の世界観を表現しようとするのは、決して悪いことではないのですが、往々にしてそういった楽曲は聞き手を置いてけぼりにしてしまうものです。
そんな中、IZAMが志向した音楽はというと、身近さ・手軽さ重視。自分はあくまで普通の人間。だからこそ、奇をてらわず、多くの人が共感できるような恋愛の歌を書こう……そんな想いのもと、彼は『Melty Love』の詞を書いたといいます。
考えてもみれば、ビートルズだって最初は、おかっぱ頭に襟なしスーツというインパクトある見た目で、「彼女はお前を愛してる~♪」とか「君の手を握りたい~♪」とか、とっつきやすい恋愛ソングを歌って売れ線になったのです。
ゆえに、いかにも目を引く中性的なルックスで、他のV系バンドが演らないような『Melty Love』を披露したSHAZNAが、大衆から受け入れられるのも頷けるというものでしょう。
吉川ひなのと結婚、俗物化していったIZAM
かくして一躍、売れっ子V系バンドの仲間入りを果たしたSHAZNA。
続く、セカンドシングルとしてリリースした一風堂のカバー曲『すみれ September Love』も、オリコン最高2位で約45万枚の売り上げをマーク。さらに同年発売したアルバム『GOLD SUN AND SILVER MOON』はミリオンセラーを達成するなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
しかし、ヒットチャートを賑わせた“ロックスター時代”は、翌1998年まで。それ以降は、ヴォーカル・IZAMが単体でワイドショーを賑わせる“ゴシップスター”時代へ突入。
1999年2月に吉川ひなのと結婚⇒同年9月スピード離婚し、2006年には吉岡美穂と再婚。加えて吉岡と結婚後は、ナルシストキャラ⇒恐妻家キャラ⇒クレーマーキャラと、さまざまな一面をテレビのバラエティで披露するなど、急速に俗物化していきます。
もはやそこに、SHAZNAデビュー当時にあった男とも女ともつかない神秘性は皆無です。
結局、SHAZNAは2009年に解散。今ではタレントとして活動するIZAMを筆頭に、メンバーそれぞれ別々の道を歩んでいるといいます。
(こじへい)
※文中の画像はamazonよりSINGLE BEST SHAZNA & IZAM