松本清張の長編小説『黒革の手帖』が、7月より武井咲主演でドラマ化された。予想をはるかに上回り、一皮も二皮も剥けた武井の好演には驚かされる視聴者も多いことだろう。


今回は、過去にこのドラマを彩ってきた一流女優たちを振り返ってみよう。

悪女? 地味なOLが銀座のクラブでのし上がる


銀行の支店に勤務する地味なOL・原口元子。彼女は銀行から横領した巨額の資金を元手に、銀座のクラブ「クラブ・カルネ」をオープンした。さまざまな欲望や葛藤が渦巻く夜の世界で、自身の野望を引っさげママとしてのし上っていく。同作はそんな物語だ。

度々ドラマ化されてきた松本清張作品のなかでも、単行本が刊行された1980年以降、5度のドラマ化が行われた代表作である。

1980年代のドラマ化


同作が最初にドラマ化されたのは、単行本が刊行された2年後の1982年。女優の山本陽子がヒロインの元子に抜擢された。
田村正和や萬田久子、吉行和子に三國連太郎と、レジェンド級の俳優が勢揃いしたこのシリーズは、全6話の中に作品の世界を詰め込み、平均視聴率は17.4%を記録した。

これがきっかけで『黒革の手帖』は人気を高め、2年後には昼ドラ枠(「花王 愛の劇場」TBS系)にて、大谷直子主演で再度ドラマ化されている。

1990年代のドラマ化


その後も清張作品の人気は衰えることを知らず、1990年代に入ってからも『松本清張特別企画・黒革の手帖』として2時間ドラマ化されている。このドラマで主演を務めたのが、女優・浅野ゆう子だった。

脂が乗っていた当時の浅野ゆう子から充溢する色気は、まさに銀座のママそのもの。単発ドラマだったにもかかわらず視聴率は18.1%という記録を残している。

米倉涼子が名演! 2000年代のドラマ化


さて2004年版の主演を務めて話題を呼んだのが、女優・米倉涼子である。彼女が名実ともに認められた作品でもある。


武井咲版のドラマが放送されるとすぐに比較対象となったのが、このシリーズだった。同作は第22回ATP賞最優秀賞(ドラマ部門)を受賞するなど、作品としての質も高く評価され、平均15%前後という高い視聴率を誇った。

また同作品には、元子に拾われてホステスとなった山田波子役に釈由美子が抜擢され、ほかにも仲村トオル、紫吹淳、柳葉敏郎、津川雅彦などの名優が脇をかためたことでも話題を呼んだ。

言うまでもなく米倉涼子の存在感は抜群で、「悪女」とは割り切れない彼女の魅力に視聴者も釘付けになったことだろう。
一方で、同じく存在感を放ったのが元子のライバル役を演じた釈由美子だ。粘っこい関西弁とキャバクラ嬢のような軽々しいノリで銀座の太客を次々と籠絡していく姿は、釈由美子の魅力を十二分に引き出した役柄だった。


最新作・武井咲演じる元子に期待!


このように、名だたる女優が演じてきた原口元子という女。2017年版では武井咲が抜擢され、さっそく話題を呼んでいる。
これまで清純派で可愛らしい雰囲気を武器にしてきた武井咲だが、本作ではそのイメージを払拭し「恵まれない育ち、金へ執着し野心に溢れた悪女」を演じている。女優としても大きな分岐点となるであろう本作は、今後も毎週欠かさずチェックしたいところだ。

普段なかなか拝むことができない、高級かつ品のある着物が楽しめるところも本ドラマの魅力のひとつ。そんな衣装を身にまとう武井は恐ろしいほど美しい。
まだまだ若々しい印象は拭えないが、ストーリーが進むに従い別の表情を見せてくれるはずだ。

(ヤマグチユキコ)

※文中の画像はamazonより黒革の手帖 DVD-BOX