イチゴの品種には「寿命がある」ってホント?
見目麗しい「とちおとめ」。03年産の作付品種別シェア(農林水産省統計)では、33.3%で圧勝だった。
このところ、イチゴ業界は新種の開発ラッシュである。2000年に佐賀県の「さがほのか」と奈良県の「アスカルビー」、02年に福岡県の「あまおう」と静岡県の「紅ほっぺ」、03年に「ひのしずく」が…いったいどれだけ出てくるんだろうと不思議に思っていたところ、先日、ある雑誌で、「イチゴには寿命がある」という記事を読んだ。

 
その記事によると、イチゴは寿命がくると品種が劣化するため、20年サイクルで新しい品種と交配する必要が出てくるのだという。ちなみに、今、シェアのトップを誇る「とちおとめ」は96年に開発された品種で、すでに峠を越しているのだそうだ。
 
というと、そろそろ「とちおとめ」にも寿命がきているのか? このままいくと、食べられなくなってしまうなんてことも…? 栃木県庁・経営技術課の栃木に聞いてみた。
「品種の特性は、基本的に固定しているので、年月でかわるものではありません。収穫時期が短くなることもないですし、『劣化』ということはないですね。ただ、ひとの好みが徐々にかわってくるというのはあります…。
たとえば、これまでAという品種で満足していた消費者が、さらに大きくて甘いものを望むようになると、Aだけでは満足させられなくなり、Bという品種との交配をすることになるんです」
 
なんだ、リンゴや梨のように、やはり味の流行りによる影響なのか。とりあえず「劣化」という心配はないようだが、どんどん新品種が生まれるには、やはりワケがあるようだ。
「リンゴや梨などのように、樹木になる果実と違って、イチゴはどこででも育てやすいんですよ。それに、種からではなく、親株から出るツルで増やす方法(ランナーという)のため、子どもを増やしやすいということもありますね」
 
また、イチゴが他のものと大きく違う点として、栃木さんは「県単位での開発方法」を指摘する。
「イチゴは、県ごとに、農業試験場などで品種改良や開発を行なうんですよ。種屋さんや農家など、民間ではほとんどやらない。
だから、イチゴは、県単位での味として、オリジナルブランド化が次々に進んできています」
 
つまり、イチゴの品種改良は各県のプライドをかけた「お役所仕事」ということなのか? イチゴで町おこしとか。
 
競争によって、どんどん美味しいイチゴが開発されるのは喜ばしいこと。でも、「甘く大きく」を追求するのはどこの県も同じなんだろうか。個人的には昔、家の庭でとれたような小粒ですっぱいイチゴも好きだったりするけど…。あんまり需要ないのかなぁ…。(田幸和歌子)