芭蕉像があるのは、清澄白河駅から5分ほどの「芭蕉庵史跡展望庭園」。隅田川沿いの一角が、展望庭園として開放されている……と思いきや、なんと4時30分閉園! おとずれたときは、すでに閉園。しかたなく、庭園の周囲にある遊歩道から、ちょっと先にいる芭蕉像を見守ることにする。
待つこと約15分。どこからともなく、5時の鐘の音も聞こえてきた。息をひそめて、芭蕉像の様子をうかがう。……2分、3分。ピクリとも動かない。ついに5分経過。
もっと人が集まったり、ガガガっと音をたてたりしながら動くのかと思ったら、誰も見ていないわずかなスキに、あっさりと、芭蕉像は向きを変えていたのだった。
近くの江東区芭蕉記念館の方にうかがったところ、この芭蕉像は電動式になっていて、それまで北側、新大橋の方を向いていたのが、5時になると西側、対岸の方に向きを変え、夜の10時にふたたび戻るのだそう。「タイマーなので、5時ジャストというわけではないんですけど」とのこと。微妙に時間がズレたのは、そんなワケだったのだ。
入れない庭園にスポットライトまであるのは、隅田川を下る水上バスや屋形舟を意識しているよう。とはいえ、ライン河の吊橋をモデルにした清洲橋の風景はこのあたりでは一番の眺めだそうで、昼と夜とで違うこの風景を、芭蕉翁も楽しんでいらっしゃるのかもしれませんね。(矢部智子)