ハチ公二匹を見比べる
お友達と待ち合わせをしました。携帯に「じゃあ、明日ハチ公前に13時ね!」と、メールが届きました。

はあい、と私はよいお返事をしつつ、考えます。ええと、今から家を出れば、13時に間に合うかな、夜通し車を走らせ続けたら、10時間くらいでたどり着けるかも。よし、じゃ、出発!

秋田県大館駅前へ向けて!

……実際、いくらそそっかしい私でもそんなミスはいたしませんが、そうなんです。ハチ公の銅像は、渋谷駅前だけじゃなかったのです。

ハチ公は秋田県出身、というか秋田犬。生まれてすぐに、東京帝國大学農学部の上野英三郎教授に飼われることとなり、東京に行きました。
この上野先生、かなりの犬好きだったようで、一緒にお風呂に入ったりとか、それはもう愛情を注ぎまくったのですね。ハチくんもそれに応えるように、上野先生をお出迎えに毎日毎日渋谷駅まで出るようになったのです。
しかし、ハチが1歳半のときに、ご主人である上野先生は学校で急逝されました。それでもハチは、来る日も来る日も、雨の日も風の日も渋谷駅前に現れないご主人をお出迎えに行き、約10年後、昭和10年の3月8日に亡くなったのです。

切ないなぁ。あの凛々しい姿の裏側には、深い深い愛情と絆の物語があったのですね。


ところで、この渋谷駅前の銅像、最初に作られたのは昭和9年と言いますから、実はハチの生前です。銅像とハチを並べて撮影した写真も現存しているというお話。ちょっと見てみたいです。ハチは、それが自分だって、理解できたのかな?
大館駅前の銅像は、昭和10年。ハチ公の死後に作られたのですが、いずれも戦時中、金属回収令によって回収されてしまい、現在の銅像はそれぞれ二代目です。

さておき、この二体の銅像を並べてみるといくつか違いがわかります。
渋谷のハチは、左耳が垂れています。これは、他の犬に噛み付かれてこうなってしまったのだそうで。大館のハチは、その事件前のハチ、ってことなのかな。

どちらも凛々しくて、どちらも後姿がちょっぴり切ないハチ公像。
待ち合わせに便利だけれど、時にはじっくりと眺めて、ハチに思いを馳せてみてね。(谷和原のぞみ/お気楽ステーション