
菊人形の製作は「菊師」と呼ばれる専門家が行なうのだが、この職人さん達の高齢化と後継者不足、まだ菊人形をとりまく状況の変化などによりこれまでの規模と質を維持していくことが困難になったらしい。
スタッフの方の話では、やはりファイナルということで入場者も多く、土日は入場を待つ人の行列ができるほどの盛況ぶりとか。お客さんは、40代以上が中心ということだが、私が取材へいった日は中高年以外にも若いカップルや外国人、カメラおじさん、そしてなぜか1人できている若い男性(菊人形マニア?)の姿も目につきました。
有名な「五条大橋」の義経VS弁慶の対決シーンや、「壇の浦の戦い」など9つの名場面が菊をまとった人形絵巻で展開されていきます。実は去年の「新選組!」の時も見にきたのですが、やはり最後ということでそこはかとない気合いが入った展示になっている気が。
人形たちが着ている「菊の衣装」は、菊の色が微妙なグラデーションになっていたりしてまさに職人技! 一体の人形を仕上げるのに1日かかり、一体の寿命も1週間〜10日間と短いため期間中に着せ替えも行うらしい。いやー、昔から何気なく見ていた菊人形ですが、そんなに気の遠くなるような手間がかかっていたとは驚きです〜。
展示の最後には、やはり最後ということで例年にはなかった50年のキャリアをもつという3人のベテラン菊師さんの紹介や、これまでの展示の歩み、菊人形づくりの舞台裏などがパネルで紹介されており思わず食い入るように見てしまいました。
中でも「へ〜」と思ったのが、明治・大正期などテレビのなかった時代には、菊人形は単なる娯楽以上の役割を担っていたらしい。たとえば、有名人の姿を見たり(今でいうロウ人形のようなもの?)、自転車やバレエといった西洋文化の学習の場として、または戦争の一場面をつくるなど社会情勢をリアルに体感できる場としても機能していたのだとか(!)、現代人がテレビやインターネットから情報を得るように、日本人はかつて菊人形から「世界」を見ていたのですねー。
19世紀に江戸ではじまったという菊人形。
(野崎 泉)