廃材や端材でも燃料にできる薪ガス自動車
先月25日〜28日に開催された大阪モーターショーで、大手自動車メーカーが様々なコンセプトカーを発表する中、木を燃料として走る「薪ガス自動車」が注目を集めていた。この薪ガス自動車を出展したのは、鳥取県智頭町で「だいいち薬局」を経営する國岡啓二さん。


車の後部にある「薪ガス発生装置」の中で、こぶし大の薪を炭化にして、それに空気を送り込んで1300℃の高温で燃焼させる。次に、そのガスを木炭層で還元して一酸化炭素と水素を発生させる。その混合気でエンジンを動かし、車を走らせるという仕組みだ。
水素と一酸化炭素が等量の「薪ガス」は、一酸化炭素主体の「木炭ガス」に比べて、水素の爆発力によるパワーが強いという。また、木炭は炭焼きの段階で3分の2のエネルギーをロスしてしまっている。木炭ではなく薪を用いる理由はここにある。

さらに、普通なら捨ててしまう廃材や端材でも燃料にできることが魅力だ。

実は、薪ガス自動車は20年ほど前に完成していた。
かつて、高校の教員を務めていた國岡さんは、オイルショックの後、80年代に石油代替エネルギーとして薪ガス発生装置の開発を始め、88年には薪ガス自動車の走行実験で約600kmを薪のエネルギーだけで走りきっていた。
そして最近になって、様々なエネルギーが注目され始めていることから、環境に優しい新エネルギーとして、一昨年から再び研究・開発を進めてきた。

今回は、「ハイブリッド」ということで、ガソリンと薪ガスの切り替えもできるようになっていて、薪ガスとガソリンの混合での走行も出来る。また、発生ガスで普通の4サイクルエンジンを回転して発電機を回すことも可能。
排気ガスは硫黄酸化物が少ないので近くにいても臭くないとか。
ただ、まだ薪ガスでは認可が下りていないため、公道を走るときはガソリンを使わなければならない。

さて、どれぐらい走れるかというと、薪70kgで50〜80kmほどは走行可能だそうだ。エンジンに濃いガスを押し込むように改造を施したので高速道路を走れるぐらいの速度を出すことも可能だとか。

大手自動車メーカー各社は、水素から電気を発生させモーターを動かす燃料電池車の開発を行っているが、その水素は地下にある天然ガスからメタンガスを取り出し、炭素を除去して水素ガスをとりだしているが、薪ガス自動車は地表にある木材を使用するので、炭素は地上で循環するだけとなり、環境に優しいという(これは「カーボンニュートラル」と呼ばれている)。

國岡さんの地元の智頭町は95%が山なので、木材を利用した薪ガス自動車・発電の普及によって「エネルギー自給の町」の実現が夢だそうだ。