鳥居も障子も尺八も! 塩ビの世界入門
上の鳥居も下の障子も、塩ビで出来ているのです。
たまたま手元にあった、「塩ビニュースレター」という資料。「ふーん」という感じにパラパラしていたところ、思わず手が止まった記事があった。

「エッ!? これも塩ビ!」というもので、最近では尺八に鳥居まで塩ビで作られているというのである。
塩ビってなんだ。水道管とかホース、あとアナログレコード、あと塩ビ製のおもちゃもあるのは知ってるが、まさか鳥居まで……。実は我々は、塩ビのことをまるで知っていないのかもしれない。塩ビの世界、奥が深いぜ、たぶん。

ニュースレターの発行元、塩ビ工業・環境協会に、その「奥深さ」を教えてもらいに行った。
「これが、塩ビの元なんですよ」
と、差し出されたのが、岩塩の固まり。塩ビの「塩」だ。で、塩ビは結局何ものなのかといえば、正式名称は「ポリ塩化ビニル」(もしくは「塩化ビニル樹脂」「塩化ビニルポリマー」)といって、プラスチックの一種なのである。
ビニルという名前だから、ビニル袋のようなものなのかというわけではない。硬いもの、やわらかいもの、用途に応じていろんな加工ができるのが特徴なんだという。
「百面相をする素材といえますね」

その昔、需要の多かった苛性ソーダを製造するとき、塩素が大量に発生していた。
その使い道が何かないかと考えた際の産物だったそうなのだが、
「塩ビのほうが完全に大きくなっちゃいまして、今度は塩ビを生産することによって、苛性ソーダのほうが余っちゃうようになって。バランスが逆転したんです」

硬いくも柔らかくも出来るうえ、長持ち。薄くもでき、光を通しやすいことから、障子紙の変わりにも使われたりしている。ほかにも壁紙やテント、バッグの表面、それからキャッシュカードに点滴用のチューブに電源コードなど、まさに変幻自在、どこでも塩ビ、身の回り塩ビだらけといった感じである。
また、可塑剤によって「くっつく」という性質もあるのだが、逆にその性質を利用したのが、ラップフィルムということだ。すげーな、塩ビ。

いっとき、ダイオキシン問題などで、塩ビの存在が問題視されたこともあったが、高温で処理するなど、「燃やし方」を間違えなければ、ほとんど発生しないのだという。そもそも紙や衣類などを燃やしてもダイオキシンは発生するのだが、
「出る杭は打たれるといいますか、製造量などで目立ってたんじゃないでしょうかね」
現在も高温で完全燃焼させることによって、ダイオキシンはほとんんど発生しないそう。

それにしても、神社の鳥居まで塩ビ製だったりするとは。
「コンクリートの鳥居がある神社など、個人的にはやっぱり抵抗ありますね」
木製だと腐ったりして劣化が早いし、「いい感じ」の風合いに加工できるという点からも、塩ビで作る利点があるようで。

よくよく見ると、“実はこれも塩ビだった”製品、まだまだあるかと思います。
(太田サトル)
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