「まんが日本昔ばなし」の定番を探る!
大人の「今」読むと、きっと新しい発見があるはず! 『決定版 まんが日本昔ばなし101』(講談社)
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

と、お決まりの台詞で始まる日本昔ばなし。
おなじみだったTBSテレビの「まんが日本昔ばなし」も11年ぶりに放送が開始されたので、最近、何度か見る機会があった。そして、ちょうど見たときにやっていたおはなしのひとつが「豆つぶころころ」だ。

このはなしでもお約束通り、正直で働きもののおじいさんとおばあさんが住んでいる。そして、となりに住むのは、欲深いおじいさんとおばあさん。あらすじを極端に解釈すると、良いおじいさんたちが、良い行いによって得をする。それを見ていた隣の悪いおじいさんたちが真似をして同じことをするのだが、欲張りすぎて罰があたる。
だから、欲張りすぎちゃダメですよ〜、といった教訓的なおはなしである。

こういった昔ばなしは、他にもたくさんあった気がする。だいたい良いおじいさんとおばあさんの近くに、悪いおじいさんとおばあさんが住んでいたような……。そう思い始めると確かめたくなってしまった。

そこで、これまでに放送された1400余りの「まんが昔ばなし」から、選りすぐりの101話を収めた絵本の決定版でチェックすることに。さっそく片っ端から読んでみた。


すると……、意外や意外。101話中、良いおじいさんたちの近くに悪いおじいさんたちが住んでいるのは、前述した「豆つぶころころ」の他に、「花咲か爺さん」しかなかったのだ!

まさか! この2話は有名なので、自分の中でもついそんな思い込みをしてしまったのか。

ちなみに「舌切り雀」では、良いおじいさんと悪いおばあさんの夫婦が登場。この辺りもごっちゃになっていたに違いない。それにしても、少ない結果に驚いた。

しかし、だいたい欲深い方は罰があたるという法則(教訓)は「こぶとり爺さん」や「赤ん坊になったお婆さん」など、他にもいろいろあった。
だいたい、昔ばなしってそういう教訓だっけ。

さて、思い込みによる勘違いで思わぬ結果になってしまったが、もうひとつ気がついたことが。

それこそ、昔ばなしといえば、「むかしむかし」で始まるのが定番。というわけで数えてみたところ、これまた驚きの結果が! なんと、「むかし」という言葉で始まるおはなしは101話中、96話もあったのだ。すごい……。しかし、「むかし」「むか〜しむかし」「むか〜し」「むかあし」「とんとむかし」「ずっとむかし」「え〜、むかしむかしのそのむかし」などなど、語り口に変化をつけているところが、またすごい。


ひょんなことから、数十年ぶりに「まんが日本昔ばなし」の数々を読んだけれど、大人になって改めて読むと、実に新鮮! すっかり忘れていたり、まったく知らなかったはなしもたくさんあったし、たしかに語り継がれるだけはある……。そんなわけで、とっても勉強になりましたとさ。
(田辺 香)