そもそも生ビールの「生」って何?
瓶も缶も中身は同じ。ラベルには「生」の文字が踊る
「生1つ!」

居酒屋でそう注文すれば、当然ジョッキに注がれたビールが運ばれてくる。樽からサーバーで直接ジョッキに注いだビールを「生」ビールと呼び、瓶ビールや缶ビールと区別しているのが一般的だ。
瓶や缶に比べて何となく上等なイメージがあるので、いつもついつい生ビールを注文してしまう。

キンキンに冷えた生ビールを喉に流し込み、「そうそうこれこれ、ビールはやっぱり生が一番!」などと単純に考えていたが、よくよく見ると瓶ビールや缶ビールにも「生ビール」と書いてある。……あれ?

そういえば発泡酒だって、商品名からして「本生」(アサヒ)、「極生」(キリン)、「生搾り」(サッポロ)、「純生」(サントリー)……と「生」をアピールしまくっているし、その他の雑酒2(いわゆる第3のビール)にも各社「生」と明記してあるじゃないか。

……うーむ。どいつもこいつも気軽に「生」を名乗りやがって。「生」の定義って、いったい何なんだ? そんな疑問をアサヒビール(株)の広報の方に問い合わせてみた。


「生ビールの『生』って、どういう意味なんですか?」
「熱処理をしていないビールのことです。熱処理はビールが微生物によって変敗(劣化すること)するのを防ぐために行うのですが、今日、ビール製造工程全般にわたっての微生物管理とビールろ過技術の向上により、日本では非熱処理の『生ビール』が主流になっています。またこの『生』の表記に関しては、メーカー間の公正競争規約によって定義し、遵守しております」

へー、そうなんだ。
「ちなみに発泡酒や第3のビールも『本生』『新生3』『ぐびなま。』……と、多くの商品が『生』を名乗ってるようですが?」
「その場合も『生』の定義は同じです。『生』が持っている鮮度の新しい爽やかな飲み口は、発泡酒などでもご評価いただける商品特性ですので、そうした特性をお伝えする表示を行なっております」

なるほどー。
何となく店で飲むビールが生ビールだと思ってましたよ。
「いえ。同じブランドであれば、ビアホールのビールも、瓶、缶 、ミニ樽の生ビールも中身は全く同じです。ビアホールと同じ生ビールをいつどこででも楽しんでいただけます」

えぇっ!? そうなの!? やっぱり「生」は一味違う! とか思ってたのに……。
「飲食店さんでは専用のサーバーを使っていますので、きめ細かくクリーミーな泡が立って、口当たりがまろやかになると思います。また、ビールに若干炭酸ガスが溶け込む事や、樽生の鮮度が新しい事などによって味に違いをお感じになることもあるでしょう」

何てこった。
「生」も「瓶」も、中身は基本的に同じものらしい。ビールの鮮度を保ち、ジョッキやサーバーをキレイに洗浄し、正しい注ぎ方にこだわり……といった飲食店の努力がビールの味を上げてはいるが、家でもそれに近い「生」ビールを楽しむことは可能だという。

今後は過剰に「生」をありがたがるのはやめて、「瓶」や「缶」で安上がりに済まそうか、なんて考えつつも、うーん……。
やっぱり今夜も「生」ビールが飲みたいなあ。
(山田真也)