不思議なミクロ生物の世界をのぞいてみよう
(写真上から)<br>「ミクロ生物観察お試しセット“ミクロの世界をちょっとのぞいてみたい方に”」。倍率30倍のお手軽顕微鏡とミクロ生物のプレパラートがセットに。<br>こちらは顕微鏡お試しセットの中でも倍率50〜250倍で落射・透過観察ができる本格派タイプ。標本が作れるオリジナルプレパラート作製キットがついている。 <br>ミクロ生物の対戦カードゲーム「単細胞遊戯マイクロ王(キング)!」。<br>「げんせいせいぶつストラップシリーズ」は12月末より発売予定
各地には色々な博物館があるけれど、その中でひときわ異彩を放つのが山口県の潮風公園みなとオアシスゆう内に併設された岩国市立ミクロ生物館。なんと世界初の微小生物専門の博物館なのだ。


目に見えないほど小さな世界にすむ原生生物に代表される微小生物(ミクロ生物)は食物連鎖の底辺で多くの生命を支えている大切な存在。目には見えないけれど、彼らがいなければ豊かな自然環境も人間の生活も成り立たない。そんな彼らの知られざる生態と役割を紹介しているのがこのミクロ生物館なのだ。

ミクロ生物館の専門職員である末友靖隆さんにお話を聞いてみた。
「こちらで見ることができるミクロ生物はゾウリムシやミドリムシ、ヤコウチュウなどの単細胞性のものから貝やエビの幼虫、ミジンコなど多細胞性のものまで様々です」

展示といってもここはミクロ生物専門博物館。その方法も他とはちょっと違う。


館内は大きくシアターとラボとに分かれていて、シアターでは大画面に映し出されたミクロ生物たちの幻想的で躍動感あふれる姿を見ることができ、事前に予約をすればラボでは専門職員の指導のもと、自分で顕微鏡を操作して思う存分ミクロの世界を堪能することができる、というからたまりません。
シアターの「顕微鏡リアルタイム放映」というコーナーでは、博物館のスタッフが高性能顕微鏡でのぞいてるミクロ生物の映像を大画面でリアルタイムで見ながら「もっと拡大してほしい」、「あっちのミクロ生物も見てみたい」というリクエストもできるというから驚きです。

そして、このミクロ生物館のもうひとつの魅力が博物館限定のお土産。
館内だけでなくネットでも販売をしているので岩国に足を運べない方でもミクロな世界を味わえるうれしいグッズだ。
「ミクロ生物観察お試しセット」の1000円バージョン(税込)は“ミクロの世界をちょっとのぞいてみたい方に”ぴったり。倍率30倍の筒型スコープとミクロ生物のプレパラートがセットになっていて、プレパラートはミジンコ、アオミドロ、ゾウリムシの中から好きなものを選べる。

このほか、観察セットにはライトがついた顕微鏡のセットから、倍率50〜250倍で落射・透過観察ができるちょっと本格的なものまで全部で5種類。セットによっては公園や林の中にすむミクロ生物たちを採取して思いのままに観察したり、標本が作れるオリジナルプレパラート作製キットがついている。これらのセットにはすべてにメールでの専門職員のサポートがついている。

そして子どもたちにうけること間違いなしなのが、ミクロ生物の対戦カードゲーム「単細胞遊戯マイクロ王(キング)!」(420円税込)。
子どもたちが楽しみながらミクロ生物への関心を高め、正しい認識をもてるようにと作られたカードゲームだ。ゲームを考案したのは、末友さんのご出身でもある神戸大学理学部の洲崎敏伸助教授の研究室。

原生生物がご専門の洲崎先生はカードゲーム製作のきっかけを語ってくれた。
「『原生生物』という生物が一般の方々にほとんど知られていないことを残念に感じていました。また、原生生物はいろいろな点で誤解されていることの多い生き物です。様々な面で人の役に立つ一方で恐ろしい病気を引き起こすこともあります。そんな原生生物のことをもっと皆さんに知っていただきたい、と思ったんです」

カードは、楽しく遊びつつ、正しい知識が身につくようにとあえてイラストを使用せず顕微鏡写真を使っている。原生生物の実際の生活をかなり忠実に再現しているルールがさらにゲームを楽しいものにしている。
実際のカードのデザインやゲームのルールは研究室の博士研究員、大村現さんが考案したそうだ。
ゲームは2人用。生物カード13枚と電子顕微鏡など特殊カード5枚の計18枚でそれぞれ9枚づつのカードを手札にして戦う。基本的にはカードに書かれた生物の体力・攻撃力の値の大小で勝負するのだが、戦うゲームの場を昼にしたり夜にすることによって光合成をするミドリムシの仲間は昼の場では体力値が2倍になったり、主に昆虫の消化管に寄生するグレガリナの仲間は夜の場では攻撃力値が3倍になったりする。特殊カードの電子顕微鏡は高倍率で生物を観察できる特性から生物カードと一緒に出せば生物の攻撃力は2倍になるといった具合。このほか特殊カードには「マッドサイエンティスト」というのがあってこれが一番うけているのだとか。


この他、洲崎先生の研究室では「げんせいせいぶつストラップシリーズ」も開発。ミクロ生物の姿をリアルに再現した“ぬいぐるみ”手づくりストラップ。全身に生えた繊毛がお茶目な“ゾウリムシ”やキュウリみたいな外観の“ミドリムシ”は発売前から大人気なのだとか(12月末販売開始)。

肉眼では見えなくても私たちのまわりに生きているミクロ生物。彼らの世界をのぞいてみれば生きていること、地球の素晴らしさを再発見できるかもしれませんよ。
(こや)

※カードに関するお問い合わせは下記まで
製作に関すること:
 神戸大学理学部生物学科 洲崎 敏伸
 (E-mail:suzaki@kobe-u.ac.jp
予約・販売に関すること:
 岩国市立ミクロ生物館
 (E-mail:micro@shiokaze-kouen.net
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