いま、給食のパンは「持ち帰らない」が当たり前?
昔はランドセルの中から、残したパンがころりと出てくることもけっこうありました。
娘が小学校に入って半年が過ぎ、ふと気づいたのが、「パンを持って帰ってきたことが1度もない」ということ。

聞いてみると、娘の場合、入学以来1度もパンを残したことがなく、それどころか毎日おかずのおかわりを2〜3回しているらしいのだが、それでも食べきれない子というのも、当然ながらいるわけで。

それで、「残す子はどうしてるの?」と聞くと、
「パンの箱に戻すんだよ」という、ちょっと意外な答えが返ってきた。
これは、欠席の子のパンに関しても同じで、自分たちが子どもだった頃のように、わざわざ届けたりはしないらしい。

たまたま娘の通う学校がそうなのかと思い、周りの友達や、地方に住む友人に聞いてみたり、ネットなどでも調べてみたのだが、「残したパンを持ち帰らない」というのは、どうやら今では主流になっていて、子どもを持つ親の間では当たり前に知られていることのようだ。
となると、昔のように、食べきれずに残したパンが、古くなって机の中から発見される、懐かしの「かっちかちパン」は存在しないことになる。

また、友達や、ときには思いを寄せている子が欠席したとき、「たまたま近所」という理由だけで、パンを自宅に届ける役を任命され、「なんでオレが?」とか文句を言いながら、内心ソワソワ……といった嬉しいハプニングもないわけだ。

自分などは、中学生くらいになると、部活帰りに空腹で歩けなくなるため、こっそり給食のパンの一部を残しておいて、「非常食」として帰り道にむさぼり食ったこともあった(※悲しい食糧事情ではありません)。
また、パンを残している友人がいると、帰り道にみんなでハイエナのように群がって、奪い合うようにして食べた(※これも悲しい食糧事情ではありません)。
それもこれも、今はない。

いったいいつ頃から、給食のパンは持ち帰らないことになったのか。都内の公立中学校のある教員は言う。
「給食のパンを持ち帰らないようになったのは、もうずいぶん前から、少なくとも私が教員になった10年前ぐらいにはみんなそうでしたね。これは小学校中学校共通で、東京だけでなく、他県でもだいたい持ち帰らせないようになっていて、その理由は『衛生上よろしくないから』です」
では、欠席の子のパンは? やはり処分されているの? と聞くと、
「もちろん欠席の子のパンも、今は自宅に届けたりしませんね。
基本的には、おかわりしたい子がして、それでも残ってしまった場合は、処分しています。もったいないとは思いますけど、『何かあったらすぐ訴訟』というのが、悲しいけど、今の現実なんですよ」
とのこと。

学校に理不尽な要求をする親が多いということが、よく週刊誌などで話題になるけれど、「残したパン、わざわざ届けたパンで食中毒」なんてことがあったら、大騒ぎになるのは目に見えている。
自分たちが子どもの頃とは、「常識」がいろんなところで変わってきているようです。
(田幸和歌子)