大人になっても楽しめる「教育まんが」
(写真上から)<br>手元にあった教育まんが『お釈迦さま』(左、昭和33年版)、『八正道の話』(右、昭和37年版)。<br>中村ひろしさんによる味わいのある画。<br>改訂新版の『お釈迦さま』
子ども向けの本というのは大人が読むにはもの足りないと思われがちだけれど、意外と役に立つことが多い。
特に歴史ものなどで大雑把に概要をつかむ時にはマンガが威力を発揮したりするものだ。


そんな子ども向けの本であまりメジャーなものではないのだけれど、私が昔から好きな本がある。
教育まんが『お釈迦さま』『八正道の話』(共に出版元は青山書院)。私が持っている『お釈迦さま』は昭和33年版で『八正道の話』が昭和37年版となっている。
子どもに向けた仏教の教えをマンガにしたものなのだけれど、説教臭くなくお話として十分に楽しめる。実はこの本、親戚の家にあったもので、小さい頃から遊びに行くたびに借りて読んでいたものを10年ほど前にもらってきたのだ。

初めて読んだ時にはお釈迦さまの話なのに、「何で出てくる人の名前が横文字なの?」とか「何で頻繁に象が出てくるの?」とか不思議に思ったものだ。
本の後ろには解説として、きちんと仏教はインドで生まれたものということや地図まで載っているのに、当時はそこを全く読んでいなかったというのが子どもらしいと言えば子どもらしいのですが……。
特に好きなのが『八正道の話』。八正道というのは仏陀自身によって悟りの道として直接説かれた8つの教えだけれど、このマンガでは8つの教えを擬人化した動物たちの話にしたり、短い物語にしたりしてわかりやすく書かれている。イメージとしては仏教版イソップ物語といったところだろうか。また画も単にレトロというだけではなくて、何ともいえずいい感じなのだ。
中村ひろしさんという方が描いているのだけれど、動きを感じる絵と表情豊かな人物や動物たちは今見てもやっぱりいい。

ところで、この青山書院の教育まんがシリーズ、さすがに初版が昭和28年なのでもう絶版なのかも、と思っていたのだが現在も出版されていることがわかった。

出版社に問い合わせをしたところ、中村ひろしさんはお亡くなりになってしまったので、中村さんの絵を原画として新たな作家さんが加筆、という形をとって改訂新版として出版しているということだった。

『八正道の話』は在庫切れということだったので『お釈迦さま』、『観音経と観音様』の2冊を取り寄せてみた。画は若干現代風にはなっているものの、お話の内容はほぼ初版と同じもの。
「現在ではお子さんだけでなく、高齢者などの方にも読んでいただいているんですよ」と出版社の方が言っていたが、改訂版のセリフの方が大人にはちょっと読みやすいかもしれない。

出版目録によると、『お釈迦さま』をはじめとする仏教まんがシリーズは、「幸せを育てる教育まんが」として30冊あまりが出版されている。

子どもの頃から何度も何度も読んでいる本ではあるけれど、いつ読んでもついつい読みふけてしまう不思議な本です。

(こや)

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