パクチーの名前がいろいろある理由って?
よくばりなほど、いろんな名前をもつ野菜です。
いまではベランダ菜園なんかもされちゃうほどポピュラーな野菜「パクチー」。

又の名を「シャンツァイ」、「香菜」、「コリアンダー」、「コエンドロ」……。
日本で呼ばれているものだけでも、こんなに名前がいろいろある野菜って、ちょっと稀じゃないだろうか。

しかも、どの名前がいちばんメジャーなのかもわかりづらいけど……。なんでそんなことになったの? 農林水産省に問い合わせると、
「統一された名前は特にありません。魚でも地方によっていろいろ名前があるのと同じじゃないですか」
と、ざっくりした回答をいただいた。

私の予想としては、いろいろな国からそれぞれの名前で入ってきて、マイナーながら、それぞれにじわじわ定着していったという説。だが、いろいろ調べてみると、JA遠州中央農業協同組合では、これを古くから栽培しているらしい。


そこで、ときめき野菜担当・アドバイザーの鈴木さんに聞くと、こんな説明をしてくれた。
「もともとは地中海沿岸のセリ科の野菜で、西暦前2世紀頃に中国に入り、広く栽培されたものと聞きます。呼び名については、中国でシャンツァイ、英語圏でコリアンダーやコエンドルと言われていたものが、日本の中で統一名として、シャンツァイ(香菜)の漢字をそのまま読んだ『こうさい』になったようです」
統一名が「こうさい」!? 
「状況ははっきりとわかりませんが、市場では『こうさい』が一般的なようですよ。こちらでは、農業試験場の近くに中国野菜の研究をされている先生がいたため、昭和50年くらいから栽培試験をしていて、出荷を始めたのは昭和54年、チンゲンサイや空心菜などの中国野菜と同時期でしたね」
当時は「チンゲンサイ」の名前もまだなく、「パクチョイ」として出荷していた時期だそうだ。

ところで、チンゲンサイがどんどんメジャーになる一方で、香菜については、「カメムシソウ」の別名もあるように、その強い香りが日本ではなかなか受け入れられなかったという。
「昭和59〜60年頃は市場の中でもほとんど知られていない存在で、こちらでも大田市場に1日に2〜3ケース出荷していた程度だったんですよ。
ところが、今は1日に200〜300ケース、年間5万ケースも出荷していますからね」
これはエスニックブームにのって、料理番組で取り入れられたりして、浸透してきた結果なのだそうだ。
また、「パクチー」という名も、エスニックブームでタイ料理をテレビなどで取り上げるようになったことで、定着してきたものだという。

つまり、順番としては、中国から「シャンツァイ」が入る→日本で「こうさい」と呼ばれたが、受け入れられず→エスニックブームで「パクチー」としてブレイク……ということのよう。
ちなみに、コリアンダーは?
「コリアンダーについては、欧米では種子の部分を乾燥スパイスとして使用することが多かったようですので、香辛料として以前から使われていた名前のようですね」

日本では結局、エスニックブーム以降に定着した「パクチー」がいちばんメジャーな名前かもしれないが、古くから活躍してきたのは、「シャンツァイ」ということのようです。
(田幸和歌子)