うなぎの値段はある町の値段が基準になっている
国産うなぎの値段は、ひとつの町が基準となっているのです。
土用の丑の日を目前に控え、スーパーにはズラッとうなぎの蒲焼きが並んでいる。悩みどころは、「少し高くても美味しい国産を選ぶか、安い中国産を選ぶか」の2択。
1年に1回だからと、国産うなぎを選ぶ人が多いかもしれない。

でもここで、ひとつ疑問に思うことがある。
それは、どうして国産うなぎの中での値段の差がないのか。
例えば“ブランド化している浜名湖のうなぎは高くて、あまり知られていない産地のうなぎは安い”なんてことがあってもおかしくないのに、実際はそうでもない。

どうしてなんだろうか。静岡にあるうなぎ組合に聞いた。

「うなぎの価格は、愛知県一色町(いっしきちょう)という小さな町の値段が基準になっています。それで、産地関係なく日本全国すべて同じになるんです」
つまり浜名湖産の価格も、ノーブランドな産地の価格も、一色町という町で決められた価格にならったものだというのだ。

一色うなぎ漁業協同組合に問い合わせると、さらに詳しい話が聞けた。
「日本全国、組合などの地域単位で池揚げ価格(組合や問屋などが養殖業者から買い取る値段)を統一させているんですね。例えばAの養殖業者からもBの養殖業者からも、同じ地域なら同じ価格で買い取るんです。それが一色町でも行われ、生産量の多い一色町の価格が、他の地域の目安になっているようです」

愛知県一色町は、市町村単位でのうなぎ生産高が日本一の町。
人口2万5千人という小さな町にもかかわらず、1983年から連続でトップの座を守り続けている。そうしたことから、一色町の価格が、全国の基準値になっているようだ。
価格の決め方は、需要と供給のバランス。さらに中国モノや台湾モノの値段も参考にして、漁協と販売組合が話し合って決めている。
ただあくまでもこれは“池揚げ価格”。僕らの手元に届くまでに問屋や業者を経由しているから、そこで価格が大きく上がったり、産地によって差が出ることもある。


でもどうして、値段を統一させる必要があるんだろうか?
「昔はうなぎが獲れないとき、1匹3千円など、業者によってはとんでもない高値で売ることがあったんです。でもそれだと消費者はうなぎを買えなくなり、うなぎ離れの危険が出てきます。そこで、安定した価格で消費者に提供するため、だいたいの価格を決めるようになったんです」

高騰しがちな価格を抑えるため、消費者を守りつつ、うなぎ業界を守るために行われている地域内での価格統一。
さらに日本では一色町が基準になり、全国の価格が「一色」になっている。

なかなか知られることのない、うなぎの値段のカラクリ。
これからうなぎの値段が上下したら、「話し合いが行われたんだな」と思ってください。

(イチカワ)