自動販売機で当たりが出て、やけに興奮したことはないだろうか。想定外のもう1本を、なかなか選べずタイムリミットが迫って、パニック気味におしるこを選んだことはないだろうか。
どうせまた当たらないんでしょ? と、気になっていないフリをしてないだろうか。

そんな当たりつきの自動販売機が、昔と比べて減っている。
1980年代はいろんなメーカーの自動販売機に当たりがついていて、野球や陸上などゲーム形式のものまであった。だけど今、当たりつきを全国で広く展開しているのは、ダイドーくらいかもしれない。

当たりつき自動販売機の歴史は、1970年代後半、そのダイドードリンコから始まった。導入した目的は、お客さんを楽しませるためと、販売促進となる付加価値作り。
当初は、すでに設置されている自動販売機に、ドリルで穴を開けて後付けしていたという。その後、79年に一体型が登場。以来、ダイドードリンコではずっと当たりつきタイプを続けている。

と、ここで疑問が。各メーカーが当たりつきから手を引いている中、なぜダイドーは、頑ななまでに、今も当たりつきにこだわっているんだろう? 担当者に話を伺った。
「弊社の飲料販売の売り上げは、9割が自動販売機(他社は4~5割)なんですね。
他のメーカーさんですと、コンビニや量販店での販売が多いですが、弊社は自動販売機がメインなので、長年弊社の自動販売機をご利用頂いているお客様へ感謝の気持ちを込めて続けさせてもらっています」

ダイドーの自動販売機の数は全国に29万台。これは業界第3位の設置数だという。多くのメーカーが、販売店へと販路を拡大する中、ダイドーは店舗と比べて値崩れしにくい自動販売機を重視してきた。
ポイントカードの発行や、音声での接客など、これまで自動販売機に多くの機能を開発してきたのもそのため。自動販売機を「お店」として考えているからこそ、自動販売機にさまざまな機能をつけてるという。

ところで当たりつき自動販売機は、これまでいろんな演出があった。
ルーレット式に始まり、最近はシンプルに4つの数字を揃えるタイプになっている。この内容って、どうやって決めてるんだろう?
「各担当が企画を出して、演出方法を決めています。メッセージボード(LED電光掲示板)に、魚が出てきて釣れると当たりというもありましたね」

でも、ここ最近はなかなか凝った演出ができずにいるという。
「全国にある29万台の自動販売機で導入するとなると、なかなか難しい部分もあります。ただ各担当で、毎年当たりの演出方法の企画は出していますので、当たりつきには、これからもこだわっていきたいですね」

企業の特徴と関係していた、ダイドーの当たりつき自動販売機。
これからも、当たるうれしさと、当たるかもしれない楽しさに惹かれつつ、大げさなまでの演出が復活することを願ってます。

(イチカワ)