まず尋ねてみたのは、首都アジスアベバの町中で拾った50歳前後のタクシー運転手さん。「日本の音楽ってエチオピアで有名ですか? 」と問いかけたところ「よく知らない」とつれない返事……。「でも『演歌』は知ってますよね? ほら日本独特の歌謡曲で」と言っても「知らない」とのこと。「それより、この車はトヨタのカローラだぜ。日本の車は30年以上前のものでもこのとおり壊れず走るから良いよ! 日本の製品は丈夫だな」と車トークになってしまった……うーん。
気を取り直して、次に訪れたのがCDショップ。ここでエチオピア人はどのような音楽を好むのか質問してみた。
「エチオ・ジャズやインストゥルメンタルも人気ですが、最も聴かれているのはエチオ・ポップですね。男性歌手で人気があるのはテディ・アフロ、女性だとアステル・アウェケでしょうか。演歌ですか? もちろん知っていますが人気があるとは言えません」
ここでもつれない回答。タクシー、CDショップともに期待のコメントは得られず最後の望みはレストラン。
さらに、同国アダマ工科大学で教鞭をとる先生とお話する機会があったので、その際も「エチオピア人に演歌は人気ですか? 」と尋ねたのだが、「知りませんね。学生について言えばダンスミュージックが人気です」とのこと。またしてもほしいコメントは取れず。そもそも、もし演歌が同国で人気なら、今回の2週間という短い滞在期間でも1度くらいは耳にするはず。どうやら日本の情報と現地の事情には少々ずれがあるようだ。
確かにエチオピアの音楽は一部演歌に似ているところもあるし、非常に日本的な演歌というジャンルがエチオピアのような距離的にも文化的にも遠い国で知られているということは、驚くに値するだろう。もちろん一部エチオピア人には演歌を愛聴する人もいるに違いない。しかし、演歌がエチオピア人に「人気だ」と一般的に断定するのは、少々大げさな気がした今回のまとめでした。
(加藤亨延)