フランス人が好きな清涼飲料といえばオランジーナ! ……ではなく実際はコーラ(フランス人は「コカ」と呼ぶ)。仏国立清涼飲料組合が出した2010年の清涼飲料消費の統計からも見て取れるように、コーラ(54%)がトップで果実飲料(24%)、レモネード(8%)が続く。


パリ市内の小売店では、日本と同じくコカ・コーラとペプシ・コーラの2強が幅を利かせているが、そこに最近「パリ・コーラ」「パリゴー・コーラ」というパリのご当地コーラが登場した。

パリ・コーラは「パリジャンのようにちょっとわがままで皮肉屋だけど、おいしさがいっぱいつまったコーラ」がコンセプト。砂糖からすべて地元で念入りに一貫製造されているそうだ。一方、パリゴー・コーラも「たっぷりのユーモアとイタズラ、エネルギー、ずる賢さというパリのエスプリがボトル詰めされたコーラ」とうたう。それぞれ基本的にパリのテロワール(風土から生産物に反映されたその土地特有の性格)と地域密着を掲げ、一部大手小売店の他に市内の個人商店へも卸している。

通常のコーラとどう違うのか。両商品とコカ・コーラを飲み比べてみた。両者ともコカ・コーラよりは甘く、パリ・コーラとパリゴー・コーラでは、パリ・コーラの方が少し甘かった。どちらともコカ・コーラよりは炭酸が弱いが、両者間で炭酸の強さはほぼ同じ(気持ちパリゴー・コーラが弱いかも)だった。

じつはフランスのご当地コーラブームは今夏のパリで限ったことではない。北西部ブルターニュで生まれたブレイス・コーラを皮切りに、南部コルシカ島のコルシカ・コーラ、東部アルザスのエルサス・コーラなど、この10年間で30以上のご当地コーラが誕生している。加えて同じ地域に複数のご当地コーラも生まれるなど、フランスはコーラ戦国時代の様相を帯びている。


例えば、中部オーベルニュ地方のブーニャ・コーラはオーベルニャン・コーラと争った結果、ブーニャ・コーラがオーベルニャン・コーラを買収する顛末となった。ブルターニュでもブレイス・コーラに対抗すべくブリット・コーラが発売された。パリも5月に、パリゴー・コーラがパリ・コーラに対し商標の無効と不正競争の理由で損害賠償請求を起こした。

なぜこれほど「ご当地もの」が好まれるのだろうか。米ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた仏地域コーラ組合の話によれば、フランスはテロワールという考え方が強く、その誇りはフランス人の心に定着しているからだという。

パリのコーラ戦争は今年始まったばかりだ。どこが売り上げを伸ばし、同地域のライバル、そしてコカ・コーラなどの大手とどう対抗していくのか。今後の展開に注目だ。
(加藤亨延)
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