30年ほど前までは、花嫁修業の定番だったらしい「お花やお茶」。若い人の中には、かなり敷居が高く感じる人もいるかもしれないが、初心者でも気軽に始められる華道のレッスンが始まった。


それが「華道家元池坊(いけのぼう)」が4月に開講した「池坊ビギナーズレッスン」。池坊といえば、数あるいけばなの流派の中でも、最も歴史が古いところ。いけばなは池坊から生まれ、ここから流派が派生していった。名称に“流”や“派”をつけず、華道家元池坊と称しているのもそのためだ。
気軽に始められる単位制"いけばな"レッスンを体験!  550年のいけばな史上初の試み
池坊いけばなイメージ

新レッスンの大きな特徴は、月謝制ではなく単位制であること。1回の受講で1単位が取れるカリキュラムで、ステップ修了ごとに「入門」「初伝」「中伝」の華道免許状が取得できる。
たとえば「入門」なら6カ月以内に8単位(8回の受講)を取ればよく、いわばチケット制のような感じ。

従来の師弟関係による個別指導ではなく、本部の厳選講師による直伝スタイルなので都合のよいときに通え、振替レッスンも可能なので、働きながらでも気軽にできる。また、規定の単位数をこなせば必ず免状がもらえるという明確さもいい。英語対応している日時もあるので、外国人や、外国人に英語でいけばなを説明したい日本人にもぴったりだ。

約550年の歴史をもつ池坊にとって、こうした本部直営の単位制レッスンは初めての試み。「2020年の東京五輪開催に向け、世界に日本文化を紹介できる国際人育成を目指したい。
また、初心者の方も気軽に学んでほしい」という思いから開講したという。

一体どんな感じなのか? 体験レッスンに行ってきた! 会場は東京・御茶ノ水にある池坊東京本部。ちなみに私はいけばな初体験で、先生に「花を生けるのに必要なのは、はさみと剣山、それに“かき”です」といわれ、「牡蠣?」と聞き返してしまったレベル(実際は「花器」のこと)。
気軽に始められる単位制"いけばな"レッスンを体験!  550年のいけばな史上初の試み
華道に必要な道具は、はさみ、剣山、花器だけ。あとは花材があればOK

池坊いけばなには「立花(りっか)」「生花(しょうか)」「自由花(じゆうか)」という3つのスタイルがあるが、今回は「自由花」に挑戦。約束事を持たず、植物を主体に自分の思いを自由に表現してよいのだという。

この日、用意された花材は、ニューサイランとゴッドセフィアナ(通称ゴッド)という草、それにバラの花だった。
初めは何から手を付けていいやら? という感じだったが「ニューサイランでステージを作り、その中にバラを入れ、ゴッドをあしらう」という先生の説明でなんとなくイメージが湧いてきた。

早速、ニューサイランでステージ作りから。「一番長いのはコレかな?」と何気なく目立った葉を手に取ると、「形だけじゃなく、色のバランスがきれいか、葉の具合がしっかりしているかなども見てくださいね」と先生。バラも単に生けるだけじゃなく、どの向きから見た表情が一番美しいか考えて生けるとよいそうだ。

これまでそういう視点で草花を見たことがなかった私は、先生のアドバイスに膝を打ちつつ、生けること約15分。初めての作品が出来上がった。
なんとも清々しい達成感がある。さらに先生から「きれいですよ」といわれて嬉しくなった。
気軽に始められる単位制"いけばな"レッスンを体験!  550年のいけばな史上初の試み
記念すべき初めてのいけばな。しかし、肝心の写真の撮り方を失敗。ちょっと上から撮りすぎた

もちろん、技術的にはまだ全然ダメだが、いけばなの面白さは少しだけわかった気がする。私自身、これまでは植物は形や色でとらえる程度で、細部の表情まで見ていなかった。でも、これからは花屋さんのディスプレイも注目しそうだし、自宅で花瓶に花を生けたい気持ちもむくむくと湧いてきた。たった1回でこんなに感化されるとは、さすが550年も続く技と心、日本の伝統文化である。


いけばな界ではかなり先駆的な試みといえる「池坊ビギナーズレッスン」。現在は、池坊東京本部限定だが、評判が良ければ今後他の地域にも広がるかもしれない。これまでいけばなに興味あったけど敷居の高さに足踏みしていた人は、ぜひ一度のぞいてみては?
(古屋江美子)