いよいよ松山ケンイチ主演の実写映画も公開される「DMC」こと、『デトロイト・メタル・シティ』

本当は甘いポップスで人気者になりたい主人公・根岸崇一が、なぜか大嫌いなデスメタルに非凡な才能を発揮し、デスメタル界のカリスマ、「ヨハネ・クラウザーII世」として崇め奉られてしまう悲しくも可笑しい話だが、原作コミック上で見逃せない表現の一つに、その独特の「擬音」がある。


漫画の擬音において、秀逸なものといえば、たとえば、ジャイアンの歌声「ボエ~」が有名だが、DMCに見るソレも、これまでに見たこと&聞いたことのないものばかり。

たとえば、ギターの音ひとつとっても、そのバリエーションの豊富なことといったらない。その一例を挙げてみると……。
ギャイギャイギャイ、ミャミャミャ、ジャンガジャンガ、ビャビャビャ、ギァニャニャニゥ、ヴィギュヴィエ、キョキョキョキョキョギョギウイ、ピキュピキュピキュピキュ、ギャャララ、ギャリギャリギャウイーなどなど。
「歯ギター」はさらに激しく、ギャヴェガァァァァヴェヴェなど。
擬音だけを拾ってみても、その表現力豊かなギターテクニック(?)がうかがえるのではないだろうか。

また、猛々しい音も得意技で、歌声は「ボガァァ」、草刈は「ザシュザシュ」、トラクターの走行音は「ズドドドド」でストップ音は「ドルン」。
クラウザーさんの所属する事務所の女社長がらみだけでも、舌でタバコを消す音は「ジュキュー」、携帯を操作する音は「カチョ」、ナイフを操作する音は「カチョンチャコンピキィン」、さらに膝蹴りをくらわす擬音ならぬ掛け声「ファッキントッシュ」など、実に斬新である。

擬音語のみならず、「擬態語」も豊富だ。主人公・根岸が衣装の上に私服を着て着膨れたときの様子は「もっこし」、着替えするときは「ギュモ」、白目をむくときは「ルリン」、気絶するときは「デロレーン」、女社長の膝蹴りを受けたときは「ベミコ」など。
さらに、カツラをつけるときは「パスン」「ガッポン」、カツラをはずすときは「ズリ」、スカートをめくるときは「バク」、お尻を出すときは「ツイン」(おっさんの場合)、「ルプン」「ルププン」(女の子の場合)、ズボンを下げる音は「ザリン」「ズリン」(凡人の場合)、「デルルルゥン」(すごいものを持ってる男の場合)など、巧みな使い分けが行われている。

……と、ここまでくると、いったい何の話なのかわからなくなってくるほどだが、さらに、実は下ネタ系統でもユニークな擬音は数限りなく存在する(ここでは自主規制)。


また、オリジナル擬音以外にも、漫画の「擬音」界の類まれなる才能の持ち主・ゆでたまご先生の「コーホーコーホー」(ウォーズマンの呼吸音)も、嫉妬に狂う根岸の呼吸としてちゃっかり登場させていたりするあたり、心憎いではないか。

映画もぜひ観てみたいけど、原作でしか味わえない「擬音の世界」も、見所十分です。
(田幸和歌子)

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