電車に乗っていたときに、「人は“端っこ”が好きだよな」とふと思った。

というのは、誰も乗っていない始発電車の場合、まず一番端っこの席から埋まっていくし、端から2番目に座っていたとき、一番端っこ側の隣に座っていた人が降りた途端、端っこに移動する人って結構いるのではないだろうか。


私もやったことはあるし、つい先日もそんなシーンを見かけたばかり。
そこでこの、「端っこに移動する人(したい人)」は、どれほどいるものなのか。まわりの30人に聞いてみた。まずは結果から。

端っこに移動すると答えた人    11人
端っこに移動しないと答えた人    8人
状況によると答えた人        11人

「端っこに移動する」と答えた人は「移動しない」人より多かった。ちなみに、「状況による」と答えた人たちも、「状況によっては移動する」という、基本的に「移動したい」気持ちが前提にある人たちだ。


ということは、実際に移動するかはわからないが、「移動したい」と思っている人が過半数ということに。

「移動する」人たちの理由はたいていが「片側の手すり部分に寄りかかれて楽だから」、または「端っこが好きだから」。

ほかに、「端っこが落ち着く」という理由も、「端っこが好き」と同じような感覚だと思うが、「他人にはさまれるのがイヤだから」と答えた人の理由にもつながってくる。つまり、居心地的な問題。そう答えた人に聞いたところ、隣にいる他人が一人だけなのと、両側からはさまれているのでは、気持ち的にかなり違いがあるという。

逆に「移動しない」人たちの理由の大半は「動くのが面倒だから」。
私も最近はこのタイプ。他に「どこだって一緒」という人や、「移動したいのは山々だが、座ろうと思っているまわりの人を考えると移動できない」という人も。

「状況による」と答えた人たちは、「すごく疲れているときだったら移動する」のほか、前述の「座ろうと思っているまわりの人」をふまえ、「電車が空いていれば移動するし、混んでいたら移動しない」という人が大半だった。

なかには実際の体験に基づいて、「一度端っこに移動したら、前に立っていた人にあからさまにムッとされたことがあって、考えてみたら悪いなと思った。それ以来、空いているとき以外は移動しない」なんて人も。

また、「逆サイドの隣に座っている人がいたら、その人のことを避けて動いたみたいで、ちょっと嫌な気分にさせてしまうかなと思い、動かないこともある」という人なども。
そこまで考えるなんて! 

なにはともあれ、端っこに移動する(したい)人が多いのは、身体的、精神的の両面から、心地よさを求めた結果のようなのだが……。これには、どのような心理が働いているのだろうか。目白大学の社会学部教授であり、社会心理学を専門に研究し、教えてらっしゃる、渋谷昌三先生に伺ってみた。

すると「心理学的にいうと、パーソナルスペース、テリトリー(縄張り)といった心理が働いています」という。パーソナルスペースというのは、他人と接した際などに特に意識する、個人の占有している空間のこと。「簡単にいうと、自分を守るための空間を確保しているんです」と渋谷先生。


なるほど。電車内はごく日常的でいて、他人同士が隣り合って座る、実はとっても特異な空間。そこで自然と、個人空間=パーソナルスペースを確保しようとする心理が働くようだ。

端っこの席への移動、意識してみていると面白い。身に覚えのある方も多いのでは。みなさんはいかがでしょう?
(田辺 香)

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