チベットやネパールには、日本の料理と似たような料理が多数ある。その代表たるものといえば、焼きそばと似ている「チョウメン」や、餃子と似ている「モモ」だろう。
焼きそばや餃子はもともと中華料理ではあるが、チョウメンやモモの味や調理法は、中華というより日本の調理法に近いといえる(たとえばモモは焼くのが一般的だが、中華の餃子は蒸すのが一般的)。

チベットにおいてチョウメンといえば、家庭料理であり、レストランで出される定番のメニューなのだが、ここにきて麺に革命が起きているという。日本にもチョコレートパフェにトンカツを突っ込むという“別の意味で革命的な料理”はあるが、まさかそんな料理ではあるまいな?

さっそく、その革命的なチョウメンを出しているというシガツェ市のレストラン・九目石老厨房に行ってみた。通常、チョウメンの麺は日本の焼きそばと同様に、細い玉子が練りこまれた麺や、中華麺を使用している。しかし、ここのチョウメンは違った。伝統を打ち破り、チョウメンの麺をマカロニにしてしまったのである。
そう、ネジ巻きのような西洋のパスタをチョウメンの麺にしてしまったのだ。

店員に聞いてみると、「ここにきたお客さんはみんなこれを食べていく。うまいだろう? まずいはずがない。革命的なチョウメンだ!」と、自信満々。味だが、チョウメンのイメージがすでに頭の中で定着しているためか、素直に「うまい!」とは言い切れない。なんでも、ヒマラヤ山脈に向かう外国人がこのレストランに多く訪れるようになり、特に西洋人が多かったので研究に研究を重ねるなか、フランス人の「マカロニにしても美味しそう」という言葉を真に受け、西洋人が好きそうなマカロニを取り入れたのだとか。
フランス人おい!

具は、ヤク(牛)の肉とにんじん、クリンクルカットのじゃがいもが入っており、味は醤油のような味がし、チョウメンそのものだ。また、「オレならチョウメンに肉は入れない。チベット人は肉はあまり食べないしね。外国人が喜ぶから入れてるけど、本当は入れない」とのことで、外国人向けにどんどんアレンジしていった結果、このようなチュウメンになってしまったようだ。本来のチョウメンは消えてしまったが、新しいチョウメンがここに誕生した。

外国人の文化が、こういう部分でも伝統を消してしまうきっかけになっている。
「伝統を残せ!」と言うのも勝手なヒューマニズムの押し付けかもしれないが、外国人からすればチョット悲しい……というのは、勝手な考えか。
(空条海苔助)