「駄菓子屋」を商売として見ると、あまりの利益の少なさに、やっていけてるのか心配になることがある。

っていうのも、僕の実家が田舎で駄菓子屋をやっている。
母親がおよそ20年前に始めた、駄菓子屋としては比較的新しい部類の店。近所の子供たちが楽しめる場を作りたいってことで、始めたという。

問屋によるけど、実家の駄菓子屋は、利益が売り上げのだいたい2割。だから10円のお菓子が売れても、儲けはたったの2円。ひとつひとつのお菓子が安いだけに、経営としてはかなり厳しい。実際、実家で暮らしてたころにあった昔ながらの駄菓子屋は、あまり残っていない。


じゃあ、今も続いてる駄菓子屋って、どうやって経営してるんだろう。母親に話を聞いた。実家なので単刀直入に……正直やっていけてるの?

「儲かる商売じゃないよ。駄菓子屋だけでやってくのは難しいと思う。ウチだと、クリーニングや宅配便をやったり、自動販売機を置いてるでしょ。他の店だったら、例えば(静岡なので)おでんやお好み焼きを出す店や、もとから酒屋の一角で駄菓子屋をやってるとこもあるよ。
あと、別の仕事をしてる人や、年金暮らしの人もいるかな。なんにしても駄菓子以外の収入が要るよね」

そして昔と比べると、さらに経営は厳しくなってるんだとか。
「バブルのころは、売り上げが多い日で2万円から3万円あったけど、今は多い日でも3千円から4千円くらいかな。利益で言ったら、今は千円いかないよ。光熱費や仕入れのときの交通費も考えると、利益はほとんどないかもしれない」

売り上げが落ちた原因って何?
「当時がバブル期だったっていうのもあるけど、昔は土曜の午前中に学校があったから、学校で友達と約束して、午後に店へ来る子が多かったと思う。だけど今は土曜が休みだから、習い事なんかもあって、土曜に来る子はかなり減ったよね。
それに休みが増えた分、平日の授業時間が増えて帰りが遅くなったから、特に冬場は帰るとすぐ暗くなっちゃう。田舎でも今は物騒だから、平日に子供が外へ出なくなってるんだって。まあ、原因はいろいろあるだろうね」

他にも、賞味期限が切れたときの売れ残りや、後を絶たない万引き被害は、すべて店の損になる。今はコンビニで駄菓子を買えるから、それで満足する人もいる。どの商売も大変だけど、ちょっとしたマイナス要素で、利益の少ない駄菓子屋は苦しくなる。だから、駄菓子屋だけでやっていくのは難しい。


なかなか成り立ちづらい、駄菓子屋っていう商売。最後に母親へ、それでも駄菓子屋を続けている理由を聞いた。

「10円とか20円の小さなお菓子を買う子供たちが、喜んでくれるからね。これは駄菓子屋を始めようとしたときから、ずっと変わってないこと。他の駄菓子屋も、子供と話すのを楽しんでるおばあちゃんとか、子供が好きな人が多いんじゃないかな。そうじゃなきゃ、儲からないんだからやっていけないよ」

そう言って笑う母親は、駄菓子屋を始める前、幼稚園の先生をやっていた。

(イチカワ)