銀行や、ゆうちょ銀行の窓口での取引で、近年は「本人確認」が必要なケースが増えている。

この「本人確認書類」には、なんとなくまず第一が「運転免許証かパスポート」で、写真のついていない保険証などの場合は他のものが必要……という認識をしていた。


でも、これ、どうもちょっと違うらしい。

というのも、ちょっと私用で大口の取引が必要になり、パスポートを持参したところ、「運転免許証はお持ちでないでしょうか」と聞かれたのである。

自分の場合、運転免許証は一応持っているが、ペーパードライバーであるだけに、普段持ち歩くことがない。一方、パスポートは近年更新していて、写真も新しいし、なんとなく「日本以外でも通用する」といった思いから第一にしていたのだが、「銀行の場合では(大口取引の場合)どこもまず『運転免許証』がいちばんで、それ以外は『本人確認』のため、別の担当者から少々質問をさせていただくことになります」と言われた。

具体的に聞かれた「本人確認の質問」は、「ペットの名前」や「母親の旧姓」などではなく、「今日、家からここまでどういうルートできたか」「今の部屋に何年住んでいるか」「何年ぐらいこの仕事をしているか」「子どもの学年は?」などなど。

それにしても、なぜパスポートじゃダメなの? 担当者に聞いてみると……。

「運転免許証は国で発行しているものですから。あ、でも、パスポートもそうですね? でも、これは当行だけでなく、どの銀行も同じなんですよ」
ずいぶん曖昧である。

試しに他の銀行にもいくつか聞いてみたが、やはり第一には「運転免許証」であり、その理由は、「本人確認書類の順番として、(1)運転免許証 (2)旅券となっているから」「パスポートの場合、住所は手書きだから」などという説明だった。
これについては、ある不動産業者さんも、「なぜパスポートじゃダメなんでしょう? 初耳ですね」と首をひねる。

ちなみに、ゆうちょ銀行では、大口取引も「運転免許証でもパスポートでもけっこうですよ」と言われた。

ところで、「運転免許証」「パスポート」がない人の場合、本人確認をどうするのかというと、不動産業者さんはこんな説明をしてくれた。

「免許もパスポートもない人は、住民基本台帳カードをとることになりますね。ただし、本人確認書類などは、昔に比べてずいぶんめんどうくさくなっていて、たとえば印鑑登録などは、運転免許証やパスポートがない場合、いったん自分の住所に封筒を送って、それを持参して初めて登録できるようになっています。また、確定申告書類が必要なとき、なくしてしまった際にも、かつては税務署で見せてもらってうつせたのですが、今は一からやり直さないといけないんですよ」

ちなみに、レンタルビデオ店で会員カードを作ろうとして、「パスポートだけじゃダメ」と言われた人もいる。その言い分は……。
「パスポートや健康保険証は住所欄が本人の手書きだから、本人確認には住所が手書きじゃないものが必要です」
その一方で、公共料金の請求書だけでOKとするところもあるから、不思議ではある。

ともかく、本人確認書類で万能なのは、やっぱり「運転免許証」のよう。
ない人は、いろいろ補足が必要な場面があるようです。
(田幸和歌子)