借りたものを返さないことや、返さない人に対しての新聞の投稿やネット上の書き込みなどをよく見かける。
大方のものはもちろんのことだけれど批判的。
その批判の大半は、「人から借りたものを返さない人って理解できまない」、「そういう人ってどういう心理なのか」。
実は私はこの批判の的ともなるべき人物で、人から借りたものを返しそびれることが多々あるのである。

先日も本棚の整理をしていて、「ああっつ」と思わず声が出てしまった。
忘れもしない、友達ができたての大学1年の頃、友人の本棚から1冊借りた本があった。『世界文学全集7 「千一夜物語 デカメロン集」』。そう、全集の1冊を借りていたのだった。
なぜこの本を借りたのかは不明、しかも未だにすべて読めていない。あれから20年以上!? 経ってしまい、いまさらどうやって返そうかという長い年月の借り物である。

その友人には10年ほど前に、全集の1冊を借りていていまだに返していないことを話した。その時、友人が言った一言。
「なんだ、あなたのところにあったの。どうしたのかと思っていたんだよね」
そう、彼女は失った1冊のことが気になっていたらしい。
す、すまない。
会った時に持っていけばよかったのだが、その時は本は手元になく、実家に置きっぱなしになっていて返せずじまいだった。

そう、返せない人はタイミングが悪い。そして、最近ようやく、彼女の本を手元に戻した。す、すまない。でも、今日をきっかけに本を返そうと思う。

会ってあやまって返すのが正しい方法だとは思うが、その機会を待っているとまたいつ返せるかわからないので郵送にすることにした。もちろん、詫び状とちょっとのお詫びの品を添えて。

このほかにもまだまだある私の借り物。自ら欲して借りたもの以外にも、「使ったら返さなくていいから」と言われたものもあるけれど、これもいずれは返したいと思っている。
でも、あまりの長きに借りっぱなしをしたせいか、その方の連絡先は今では不明。本当にタイミングを逸している。
これも10年ものである。

本など借りてすぐ返せないもの、長時間、長期にわかって使うものは借りすべきではない、とこれも実感。

ただし、お金に関しては子どものころからの親の刷り込みもあって、「貸し借りは絶対にダメ」というのが根強く残っているので、基本的に金銭のやり取りはしない。
ただ、たまに割り勘のお釣りなど、小銭を借りてしまうこともあるのだけれど、できるだけ1円単位まできっちりと返すようにしている。大人の付き合いになると、ごちそうになってしまうこともあり、なかなか金銭のやりとりも難しかったりするのだけれど。

何かと後手に回すことが多い私、きっとこれがいけないのでしょう。
そうこうしていると、どんどんと借りたものを返せなくなってしまう。やはり借りたものはすぐ返す、これが基本だとつくづく実感しました。
(こや)