ファミレスやカラオケ屋などのドリンクバーで、以前から気になってたのは、ジュースと一緒に出てくる「透明の液体」だ。

たとえば、オレンジジュースのボタンを押すと、オレンジ色の液体ともうひとつ、明らかに「透明の液体」が同量くらいの勢いで注ぎ込む。

「ケチって薄めてる?」と思い、飲んでみると、別に薄めた味というわけでもない。

そんなことを思っていたところ、発売されたばかりの人気コミック『聖☆おにいさん』のなかでも、ブッダが同じ疑問に頭を悩ませていた。

いったいどういうしくみで、中はどんな風になってるの? 「ソフトドリンク用注出機材」の輸入代行を行うイースト・アジアチック・カンパニー・ジャパン(EACジャパン)に聞いてみた。

「機械は、アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツなど、各国から仕入れています。もともとこのシステムが生まれたのは、諸説ありますが、アメリカかイタリアと言われており、お店のコンセプトとして、ソフトドリンクは日本のように厨房という隠れた場所で供するのではなく、むこう(アメリカやイタリア)では“エンターテインメント”として、お店の人が出す場合も、エンドユーザーが出す場合も、出てくる様子を見て楽しめるように考えられたと聞いていますよ」
もともとは「セルフサービス」「簡略化」目的ではなく、「エンターテインメント」だったのか。
ドリンクを勝手にミックスして、悪ふざけのような「オリジナルドリンク」を作る人もいるが、「エンターテインメント」としては案外正しかったのね……。


ところで、気になる「透明の液」の正体は?
「機械は、バルブの出る寸前まで原液のシロップや炭酸水などがタワーの中に入っていて、まさしくバルブの場所で混ざり合って出るようにつくられています。透明の液体は、水か、炭酸水ですね」
もともとできあがったものを貯蔵しておくよりも、作りたての味わいを楽しめるということ?
「いえ、それより『場所』の問題が大きいです。飲料としてできあがったものを出すと、かなりの場所をとってしまうからです」
つまり、運搬・保存の効率面から「濃縮還元」したシロップを使っているわけで、たとえば、ドリンクバーで「濃縮還元100%のジュース」のボタンを押し、水が出てきたからといって、ウソでもなんでもなく、濃縮したジュースと水とあわせて「100%」になっているということのよう。

ところで、炭酸は水で薄められていないの?
「いえ、コーラなどの炭酸は、コーラの原液のシロップと、炭酸水でできています。炭酸水は、水道水をフィルターに通して、二酸化炭素の内圧のかかったタンクに注ぎ、貯蔵しておくので、機材のほうにはシロップだけを在庫しておけば良いというわけです」

ちなみに、日本でのソフトドリンクディスペンサーは、4~6種類のフレーバー数が主流で、この場合、中にあるのは「4~6種類のシロップ」と水、炭酸水だけ。

本来は「エンターテインメント」として生まれたシステムが、日本では特に「省スペースで何種もの味が楽しめる便利な存在」として活躍しているわけです。

(田幸和歌子)