試し印刷や、印刷ミスで使用した紙で、裏側が白紙のものを「裏紙」と呼ぶが、これを裏紙と呼ぶのって、ちょっとおかしくないですか? 普通に考えると、「使用済み紙」とか「印刷済み紙」とか読んだ方がわかりやすいと思うんですが……。

なぜ、そしていつから裏紙という言葉が使われはじめたのか、そのルーツを探ってみよう。


まず、裏紙といえばプリンター、ってことで、大手プリンターメーカーの問い合わせ窓口に、裏紙の語源を聞いてみたところ、こんな回答をいただいた。

「すみません、裏紙という言葉は当社でも利用しておりますが、なぜそのような言葉が使われはじめたかについてはわかりかねます」

いくつかの主要メーカーに問い合わせてみたが、回答はほぼ同じ。どうやら、裏紙という言葉は、プリンター業界で正式に使われている言葉ではないようだ。つまり、誰かがたまたま「表面だけが印刷済みで、裏面が白い紙」を「裏紙」と呼びはじめて、それがいつのまにか日本中に広まった、ということが考えられる。

次に問い合わせてみたのが、プリンター用紙を作っている製紙メーカー。大手製紙メーカーの問い合わせ窓口にお聞きしたところ、こんな回答をいただいた。


「語源かどうかはわかりかねますが、和紙の中に『裏紙』というものがございまして、もしかしたらそれが関係しているのかもしれません」

おお! これはもしかしたら! さっそく和紙について調べてみると、和紙の世界に「肌裏紙」や「総裏紙」といったものが実在することがわかった。

書道紙を見てもわかるように、本来の和紙はとても薄い。そのため、掛け軸や巻物を作るときに、薄い和紙を補強するために、「裏打紙」という紙が使われる。この裏打紙の中で、和紙に直接貼り付けるものを「肌裏紙」、その更に上に貼付けるものを「総裏紙」と呼ぶ。裏紙の語源は、このあたりからきているのではないだろうか。

とりあえずの調査結果をまとめると、筆者の想像はこうだ。


プリンターが普及し、「表面だけが印刷済みで、裏面が白い紙」を試し刷りに使う人が増えてきた。

「表面だけが印刷済みで、裏面が白い紙」といちいち呼ぶのはめんどくさいので、もっと短い名前が必要になった

たまたま、日本の伝統工芸にたしなみのある人が、「表面だけが印刷済みで、裏面が白い紙」を略して「裏紙」と言った

言いやすいので、みんなが使いはじめた

ちなみに、シールの剥離紙(はくりし。シールの粘着面を保護する紙)のことを「裏紙」と呼ぶこともあるみたいだが、これも和紙の裏紙がもとになっているのかもしれない。

もちろんこれはあくまでも仮説であり、真相はまだ闇の中である。今後も捜査を続けていきたいと思っているので、裏紙の語源に関する情報、お待ちしています。
(珍満軒/studio woofoo)