「北海道にはゴキブリがいない」とは、よく聞く話。これって本当だろうか。


実際に北海道出身者や、北海道に住んでいた人などに会うたび、この質問をしてきたが、回答はいつも「北海道にはいない」「東京(あるいは別の場所)に来て初めてゴキブリを見た」「少なくとも、自分は北海道ではゴキブリを見たことはない」といったものばかり。
なかには「温暖化の影響などで、いまは北海道にもゴキブリが出るらしい」「民家にはいないけど、ビルには出るらしい」「東京のゴキブリの半分くらいの大きさのものが出るらしい」などという声もあったものの、実際に北海道で見たという人には、会ったことがない。

そんな疑問を調べていくうちに、見つけたのが、「北海道環境バイオセクター」という会社。
その名の通り、北海道の会社だが、驚くのは、ゴキブリ忌避剤「SARABAゴキブリ」なるものを製造・販売していること。
やっぱり北海道にもゴキブリが出るということですか? 代表の三國康二さんに聞いた。

「ゴキブリは、北海道にもいます。
ただし、ほとんど家庭にはいません。いるのは集合ビルなどで、スナックや飲食店があるようなところです」
現在57歳という三國さん自身、実は「ゴキブリを見たのは、旅行に行った関西の旅館で1度だけ」。だが、飲食店を経営してる人から、内緒で「ゴキブリが出る」という話を聞くことがあるそうだ。

北海道にゴキブリが出るようになったのは、一般には、流通が激しくなり、段ボールにゴキブリの卵が入ってくることなどが原因と言われているそうだが、一般家庭では、まだゴキブリに悩まされている人はあまりいないらしい。ではなぜゴキブリ忌避剤を作ったのか。
「私の会社はもともとバクテリアをつくっていて、それで漁業の厄介者・ヒトデの処理ができないかと思ったんです。
研究者の間では研究されていませんが、ヒトデには虫を寄せ付けない忌避効果があることが、昔から知られていました。農家の人は畑にヒトデを入れたり、かつてのトイレにはウジがわくので、ヒトデを入れて、ウジ防止をしていたんですよ」
そこで、オガクズとヒトデ・バクテリアを一緒に入れて分解・発酵させたところ、1週間で、ニオイもない、ヒトデ成分の入ったオガクズができたのだという。
「これを生ゴミバケツに入れたところ、ウジがわかなくなり、ニオイもしなくなりました」

さらに、東京の友人から「ゴキブリに良いものはないか」と相談され、これを応用して4年前に作ったのが、オガクズから抽出した液体だ。
「チャバネゴキブリがとびかっていた民家で、1シーズンにこの薬剤を100ccぐらい撒いたところ、全然出てこなくなったそうです。1匹だけ出たのは、この薬剤をまかなかった風呂場だけ。外の台所の下にはガサガサやってる姿も見られたそうですが、中には入ってこなかったと聞いています」

これが前述の「SARABAゴキブリ」として製品化されたのは、まだ半年ほど前。
同社ではゴキブリのほか、カラス、ネズミ、アリなど、様々な忌避剤を製造・販売しているが、「殺すのではなく、忌避=寄せ付けない」性質から、ネットの口コミなどで、ちょこちょこ注文が入っているそうだ。

モノが頻繁に行き交う時代ではもはや、「ゴキブリのいない場所」なんて、なかなかないのだろうか。ゴキブリに悩む人は、ぜひご参考に。
(田幸和歌子)