夙川アトムが業界用語を連発するCMが話題の、金鳥「ゴキブリがいなくなるスプレー」=「ゴイスー」。

「2週間に1度繰り返し使用するだけで、いつのまにかゴキブリがいなくなる」というコンセプトは、「出てきたら退治する」殺虫剤とは真逆の発想である。


ところで、近年、「虫コナーズ」などをはじめとして、蚊やハエに関して、「予防」的な商品が増えているけど、これってなぜ? 大日本除虫菊に聞いた。

「最近の若い方々は虫の苦手な人が増えているということですね。推測の域を出ませんが、都会のマンションなど、高層集合住宅で生まれ育った方々が増えているのではないでしょうか」(宣伝部)

子供時代に友達と土いじりをしていたら、必ずミミズや昆虫などに遭遇していたもの。だが、「自然界の生き物と触れ合う機会を持たずに大人になった人が増えているのでは?」という指摘だ。
確かに、昔は、お母さんが新聞紙を丸めてゴキブリを退治してくれるような光景がよく見られたけど、今はそんな勇ましいお母さん、さらにお父さんも、あまりいないかもしれない……。

ところで、好物でおびき寄せて捕獲するタイプの捕獲器やホウ酸団子とは、具体的にどう異なるのか。

「捕獲器はゴキブリが好むエサで誘引し、粘着テープで物理的に捕獲するものですが、ゴキブリは集団で生息しているので、そのうちのごく一部のゴキブリがたまたま入ってしまうだけ。いわば『対処療法』に過ぎないので、ゴキブリの根本的な駆除にはなかなか至りません。それにゴキブリを誘い出すためのニオイを発散しているので、頻繁にゴキブリに遭遇することになります。また、ホウ酸団子もゴキブリの好むニオイをつけているので、同様にゴキブリをおびき寄せることが第一の目的になってしまいます」

確かに、エサがあるからこそ、「遭遇の機会」も増えてしまうことにはなる。
「ゴキブリに関するユーザーアンケートによると、多くの女性の害虫に対する感覚、特にゴキブリに対しては『その姿を見るのもイヤだ』という苦手意識が強く見られました。そこで、退治する以前に、『家の中に入ってきて欲しくない』『死骸を見るのもイヤ』という要望に応える製品を作ろうと開発したんです」

とはいえ、薬剤が足に触れたゴキブリは、結局、部屋のなかで死んでた……ということにはならないもの?
「ゴイスを使用されたときの部屋(家庭)のゴキブリの生息状況(数量)によって、反応は違ってくると思います。
ゴキブリは、夜行性なので、普段は流し台や冷蔵庫の裏などの人目につかないところに卵を産み、集団(コロニー)で潜んでいます。基本的に噴霧した場所にたいしては、本能的に危険を察して、寄り付かないのですが、すでに集団で大量に生息している場合、エサや水を求めて、どうしてもその場所を通過せざるを得ない時には、足から薬剤が浸透して、徐々に弱り死に至るので、ヨタヨタで這い出てきて、部屋の中で死ぬこともありえます」

「すでに同居中のゴキブリ」は仕方ないとして、基本的に、外部から進入した場合は、噴霧した場所には近寄らなくなるということのよう。

見ないですむなら、やっぱりゴキブリ、見たくないですよね……。
(田幸和歌子)