本格中華焼きそばも、家庭用のチルド麺も、カップ焼きそばも、それぞれ別の美味さがあり、どれもこれも魅力的な「焼きそば」という存在。

そんな中で、ちょっと不思議なのは、スーパーでおなじみの、3食ぶん入った「マルちゃん」などのチルド麺だ。


カップ麺などは液体ソースが主流(液体+粉末の場合も)なのに、なぜかチルド麺といえば、粉末ソースが当たり前である。
この粉末ソース、自分などはあまりに好きすぎて、業務用スーパーで「業務用焼きそば粉末ソース50人前」というのを買ってしまったことがあるほど。

液体ソースにはない独特の香ばしさは、中毒性があると思うのだが、ここで改めて疑問に思うのは、「なぜ粉末なのか」ということだ。
もしかしてビニール袋の運搬上、液体ソースでは破裂する可能性があったとか?
チルド麺で日本一の売上を誇る「マルちゃん 焼そば3人前」でおなじみの東洋水産・広報宣伝部に聞いた。

「弊社の焼そば3人前は、ソースの味と香りが、調味料と香辛料をバランス良く配合し、お子様からお年寄りまで幅広い層のお客様に支持される飽きのこないオーソドックスな味になっています。また、粉末タイプにすることで、調味料や香辛料の旨みやスパイシー感を引き出し、香りを立たせるのに適しているんですよ」

運搬上の理由ではなく、香りの問題であって、ソース独特の香ばしい匂いは食欲をそそるが、「粉末タイプ」のほうが香辛料の香りが立つ、という理由が大きいようだ。

「粉末タイプのソースは、麺とのからみが良く、麺全体に均一にまぶせます。また、麺の表面にソースがからむことで、香辛料が強調され、べたつき過ぎず、麺同士のほぐれも良くなります。具に野菜や肉を加えたときにも、野菜から出た水分を粉末ソースが吸い、麺がやわらかくなりすぎず、しなやかでふわっとした食感に仕上がるんです」
確かに、家庭でつくると野菜などをたっぷり入れるため、液体ソースを混ぜるとベタついてしまうこともある。
粉末ソースは、余分な水分を吸ってくれる重要な役割も担っていたとは!
「さらに、各ご家庭のお好みにより、野菜や肉などの様々な食材と組み合わせられ、粉末ソースの分量を調整して淡味に調理するなど、『我が家の味』の工夫も手軽にできます」

ところで、チルド麺の焼きそばは「3人前」が多いが、これはなぜ?
「3食入りにすることで、経済性が高く、お客様にとってのお買い得感も高かったことがあります。また、素材として、賞味期限が2週間あり、誰でも手軽に作れることから、普段から一般家庭の冷蔵庫に保存されている肉や野菜などの身近な食材と同様に、買い置き・書い足し保管して、様々な食シーンに合わせて、『素材』として使い分けるのに適していました」
この焼そば3人前が発売されたのは、昭和50年4月。当時は家族一緒の食事が一般的で、ファミリーユースに合った分量が「3人前」だったのだという。

「また、一般的な家庭用のフライパン(直径26~27cm)を使って調理するのに合っていたこともありました」

すっかり個食化が進んだ現代でも、不況下にあって、焼きそばが再び売上を大きく伸ばしているというのは、先日、新聞で報じられたばかり。

粉末ソース焼きそばの時代が、再びきました。
(田幸和歌子)