「近視の人は老眼にならない」とか「老眼になるのが遅い」と言われるが、これは間違い。

老眼の程度や感じ方、進み具合に個人差はあるものの、水晶体は加齢で変化し、次第に硬くなっていくもので、実際には40代半ばで100%の人が老眼になるという。


近視の人の場合も、メガネやコンタクトで正しく矯正していれば、近くが見えなくなっているのを感じるはずだが、実際には弱めの矯正をしている人が多く、感じるのが遅いだけということ。また、メガネをはずせば近くが見えるだけに、「老眼ではない」と感じるというのが実情のようだ。

つまり、誰にでもやってくる、避けられないのが「老眼」なのだが、近年、画期的な治療法が登場していることをご存じだろうか。

アメリカのアキュフォーカス社で開発され、昨年12月に日本で本格導入が始まった「アキュフォーカス」だ。
「角膜の中にリングを埋め込むだけ」というけど、新しい方法だけに、なんだか怖い気もする。どんな手術なのか。


実際に施術を行った、みなとみらいアイクリニック主任執刀医で医学博士の荒井宏幸先生に聞いた。
「アキュフォーカスは、点眼麻酔で15分程度の手術で、目の中の手術は行いません。フェムトセカンドレーザーという特殊な機械で角膜の層間にポケットを作って、そこに黒いリングを置くだけなんですよ」

ものを見るためには、目の中に入ってくる光を角膜と水晶体のレンズで屈折させ、網膜に光を集め、ピントを合わせなくてはならない。
だが、老眼では、水晶体のピント調整機能が落ちてしまうため、ドーナツ型のリングを入れ、「ピンホール効果」を利用するのだという。
「小さな針の穴を通る光は、一筋の光となるので、どこでもピントがあいます。また、子どもの頃、四角い箱の中を黒く塗り、側面の中央に小さな穴をあけて、反対側の側面の内側に印画紙を設置する『ピンホールカメラ』の実験をしたことはありませんか。
アキュフォーカスは、それと同じ原理なんですよ」
最先端の技術と、アナログのテクノロジーが融合した治療法ということだ。

とはいえ、リスクなどは気になるところだけど……。
「レーシックの場合、実際に角膜を削ることになるので、もとには戻りませんが、アキュフォーカスはリングを置くポケットをつくるだけなので、入り口の部分をあけるだけ。仮に何か問題があっても、縫合する手術と違って、ポケットに『入れているだけ』なので、リングを取り出せばもとに戻るんですよ」

リングの厚さはコンタクトレンズの10分の1程度。大きさは直径3.8ミリほどで、中央に直径1.6ミリほどの穴があいたドーナツのようなかたちをしているそうで、
「コンタクトのように表面にあるわけではないので、異物感などはありませんし、見た目にもまったくわかりません」とのこと。

ちなみに、遠くを見るには利き目のほうが良いことから、アキュフォーカスは、利き目じゃないほうの片目に入れるそうで、料金は30万円。


「眼内レンズ」のため、取り替える必要もなければ、ケアもいらない「一生近くが見える」方法として、検討してみる?
(田幸和歌子)